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主にゲームと映画についての雑記。

ローン・レンジャー

久々に映画の感想書きます。例によってネタバレが含まれているので適宜あれしてください。

ローン・レンジャーという作品自体はおよそ60年前とかなり古くからあり、「白人嘘つき、インディアン嘘つかない」などよくも悪くもインディアン像のステレオタイプとして有名な作品であったのを新たに打ちなおしたのがこの映画のようですね。 制作の過程で資金難やシナリオのリライトなどがあり、モメに揉めた挙句にゴールデン・ラズベリー賞を食らったという経緯がありますが、個人的にはかなり楽しめました。    

   

基本を押さえた手堅いストーリー


結論から言ってしまうと実はこの映画、物凄く盛り上がりまくってマッドマックスみたいに常時ドンドンドコドコ大騒ぎする作品ではないです。ある程度盛り上がるシーンは有りますが、常にアクションシーンと言う程でもない。

しかし、ストーリーそのものは手堅くしっかり作っていると思います。

甘っちょろい検事のジョン(ローン・レンジャー)と未開の地のシャーマン・トントが凹凸コンビを組んで、こういう時代モノによくある勧善懲悪に励むというふうに 見せかけておいて、実際のところかなり現代風に手直しされたお話になっています。

ジョンはよくある不殺系のキャラで、いわゆる絶対法の裁きを受けさすマンなのですが、ジョニデ演じるトントの方は手段を選ばず復讐をしようとするドライな男なので、そのへんのバランシングがとても見ていて小気味よいです。やらなきゃいけないところはトントがしっかりやってくれるので「何をゴタク並べてんだ」とイライラする事もないですし、トントの人を食ったような態度はジョニデのはまり役で安定して面白いです。

そしてここが結構いいなと思ったのですが、トントは「トラウマのせいで自分をシャーマンだと思い込んだ末に、他の集落からも笑われて爪弾きにされた孤独な狂人」であることが明かされ、いわゆる「インディアンが白人に迎合しているかたち」ではないことがわかるんですね。トント自身も終始ジョンに対して「なんだこの白人野郎…」みたいな仏頂面しているので白人至上主義みたいな気持ち悪さはかなり取り除かれてくるわけです。

つまり、「白人様がおまえらインディアンを助けてやろう」だの、「ネイティブの人を大切にしよう」みたいなイデオロギーのニオイから一度隔離して、「トントは"インディアン"である前にまずトントという個人である」という立ち位置に居させているということです。

この点については、かなり気に入りました。    

   

惜しいところ


やはり、見た目の派手さが少し足りないところがあります。

いや、アクションシーンは暴走列車を所狭しと走り回ったり、瞬間的に盛り上がるシーンはちょくちょく入り、コメディもあって悪くないのですが、いかんせんジョンが非暴力的な主人公なので全体的な盛り上がりに欠けます。

銃はあんまり撃とうとしない、格闘戦もしない、頭脳プレイもあんまりない。それは全部トントがやります。トントがやってくれます。だからアクションシーンでのジョンの役割はピーチ姫同然になってしまっているのがあまりにも手痛い!

全体的な雰囲気がかなりシリアスでダークなのもあいまって、結果的にジョンの存在価値がトントとの漫才に極振りされてしまうのが……惜しいですね……。せっかくのマスクなのにね。          

まとめ


  全体的に、ご都合主義で上手くいきすぎるシーンがありますが、ちゃんと「エグい」シーンも入れてあり、ただの「悪いやつ倒せばそれでオッケー!!」でなくちゃんと地に足ついたストーリーのように思います。荒野をウロウロしたりと若干間延びしたカットも有りますが、概ねメリハリがあって、見ていて「面白い!」と感じました。  

ただまあ、ご家族で見るのにはちょっと重いかも。やっぱり、西部劇なので「白人がネイティブの土地を侵そうとしている」という背景を…つまりアメリカの歴史や、今問題になっているネイティブのことを全く知らないとちょっときついです。レ○プシーンこそありませんが、復讐の物語ですし「ダークな描写はつらい…」という人もいるかもしれません。

しかしながら、ディズニーがサポートしただけあってストーリーのまとまりは非常に良い。結構カッチリとしたいい映画です。120点を期待して観てしまうと物足りない作品ですが、手堅く90点を叩きだしてくる。名作ではありませんが、"快作"と言えるでしょう。

「ちょっと映画を見たいかな」って気分の土日に見るのに結構オススメですな!