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主にゲームと映画についての雑記。

映画の感想「デビルマン」

 do do pi do.(あいさつ)

 おはようございます。AKLOです。久しぶりに映画の話をします。

 まあ、ほんとはアナイアレイションがすごかったよとかそういう話をしたいのですが、諸事情によりある映画を観たのでその感想を書きます。

 来たか……来ちまったな。この映画を見て感想を書く日が……

 




もくじ


あれは誰だ


 デ ビ ル マ ン

 の話をします。


 オイ、逃げるんじゃねえ。ブラウザバックさせねえぞ。オメエも俺の感想読んでデーモンニナッチャッタヨするんだよ。

 さてまず、僕がいかにしてこのような手の込んだ自殺、人生七十余年のうち120分をデーモンの生贄に捧げることにしたかという経緯からお話したいと思います。
 そも、皆さんが御存知の通り、実写版デビルマン非常にアレな作品として一部界隈に名が通っておりますが、昨今とある……有名RPGシリーズを題材にした……あなたの物語的な………CG映画が劇場公開されまして、その流れで「この映画は実写デビルマン以下だ!」という言及がいくつか散見されたことがきっかけです。この言い方というか、デビルマンを基準としたひどい映画の評し方というものに僕は少し懐疑的でして、というのも僕が大好きな映画「CASSHERN」に対してもそういう言われ方をされ、いち映画ファンとしてカチンと来ていたことを思い出したため、「じゃあデビルマンっていうのは何なのか、どういうレベルにあるのか、僕がしっかり観てデビルマンという罵倒の正しい使い方を定義してやろうじゃねえか!」と憤りました。


 とどのつまり実写デビルマンがきっかけで地雷を踏み抜かれたからキレたという話ですね。一行でまとまりました。


これは何だ


 実は結論から言ってしまうと実写版デビルマン意外と面白かったです。

 いえ、僕はシラフです。変な植物を燻したりもしていません。僕の目を見てください。真実を話す人間の目をしているでしょう?

 真面目に、実写版デビルマンはお話として観られるレベルだったと思います。これについては僕が一番ビックリしました。確かに壊滅的に面白くない要素が多く、これを見るくらいならティッシュ箱を切ってメンコを作ったり校庭の隅でアリをぷちぷち潰したり桶に革を張ってベーゴマでも回してたほうがずっと人生において有意義な気はしますが、実写版デビルマンは「一本の映像作品」としては最終回ツーアウトツーストライクくらいのギリギリさで成り立っている作品だと思います。

 これについては、僕が教養の一環としてアルバトロスの"ナチス・イン・センター・オブ・ジ・アース"という超名作を観て頭をやってしまったことで映画のクオリティに対する下限のハードルがパンチドランカーみたいになっているせいでもあると思いますが、少なくとも120分のあいだ山あり谷ありでイベントが起きており、原作の力で物語にしっかりオチをつけたという意味で、デビルマンは大変偉いと思っています。
 そもそも、外人キャストのアドリブ八割みたいなクッソどうでもいい謎会話を長回しして姑息な尺稼ぎをしたりしませんし、撮影機材が露骨にハンディカムで常時カメラマンの影がモロに映り込んでたりしない時点で「やるじゃないか!!!」と称賛されるべきではないでしょうか。もし僕が会社の意向で急に南極基地に出向して娯楽に飢えてたりしたら、観たあと「あー面白い映画だったなあ」くらいは言うと思います。


 そもそもこの映画は永井豪氏の名作「デビルマン」をベースにしているので、そのルールの範囲内でやっている限りは、多少改変しようが面白い話としてまとまります。ですから、このルールを犯しすぎなかった(全く犯していないとは言っていない)ため、デビルマン自体なかなかまとまったお話だったように思います。悔しいですが。

 確かにデーモンの設定を寄生生物に移したことで多少の混乱はあったかもしれませんが、了の父親が見るも無残なグロテスクな肉塊に変異しているシーンなどは非常に見応えがあり、画的にもショッキングで興味をそそられます。このままバイオホラー風味の展開を続けていき、原作と混ぜながら近年で言うところの仮面ライダーアマゾンズのようなシリアス路線に入っていけば間違いなく面白かったでしょう。まあこの直後に変な精子飛ばされてオレデーモンニナッチャうんですけどね。
 さらに言えば、そのオレデーモンニナッチャッタヨした後の展開はひどいんですが、ちゃんと頑張って「人間のほうが悪魔じゃないか!」という、原作でも大事に描かれてきた骨子をおさえようとしている姿勢はもっと評価されてもいいんじゃないでしょうか。ミーコちゃんが人間のときでさえいじめを受けていたのに、デーモンになってもっと虐げられてもなお人間を助けよう、弱者に寄り添おうとする姿。相手がデーモンでも関係なく、人として守るべき矜持を貫き通した、牧村家の人々。それを狂乱のままに襲う人々の醜さ……そして、ついには生首にされてしまう美樹ちゃん。ここまでしっかりと原作のシーンを押さえつつ「悪魔は本当に悪か」「悪魔になんかならなくても人間に巣食っている悪魔がいる」とはっきり明示しているので、実は実写版の脚本自体は忠実にやっていて、磨けば光るものなのではないか?と思えてきます。
 また了のオヤジさんについて触れましたが、デーモンの造形やCGアート自体は2005年という時代を踏まえると卓越したものがあると言っていいでしょう。終盤のヘルオンアース、人間の体で作られる巨大な肉柱なんかは素晴らしい気持ち悪さでした。
 そういった再現度というか、要素要素で注目していけば、実はデビルマンはそれほどひどい映画じゃないんじゃないか?と錯覚する思えてくる部分があるのではないでしょうか。


ハッピーバースデー!デビルマン


 しかし、残念ながら、それは「ワールドワイドに映画というもの全体の括りで見れば」という前提でのお話です。邦画としては、間違いなく駄作だと断じても過言ではないと思います。

 まず原作に忠実にやっていることは褒められるべき点ですが、裏を返せば特に自分たちでなにかしらの落とし込みをやろうと考えていたわけでもなく、デーモンが寄生生物なんだ!というオリジナル設定も特に活きていない(人から人へ感染するとかそういう描写もない)。

 そして一番ひどいのは、ジュノンボーイの主演二人。これが論外にひどい。一分一秒余すことなくなんだこれは?という演技しかしない。
 何がひどいって「声」がひどすぎる。アクションはもう、しょうがない。わかった。できなくてもいい。いいよ、MP5両手に握ってちょっとした段差をヒョイ降りしながら戦っても。そこは譲る。でもなんなんだその声は…?実写版デビルマンを観終わってすぐ言わずにいられなかったのが本当にこの点で。あまりにも我慢できなかったので視聴直後


何が個人的に実写版デビルマンで気に食わねえって声なんだよな。叫びが芋虫口に入れてるみたいなくぐもり方してて明の悲しみに対して何も思えない。あとデビルマン形態のときのアーとかウーが一番酷い。喋る前に口からその芋虫を出せ


 と、ごちるしかなかったですね。口が悪くて申し訳ないのですが。たぶん実写版の明と了は芋虫を口に入れてしゃべることを念能力の縛りにでもしてたんじゃないでしょうか?「あああああああぁぁ!!!」と叫ぶべきところを彼らの場合は「ンモモオオオァァァァオオオオオ!!!!」とかになるので、「田んぼでボールギャグ嵌めたような声で急に絶叫する対魔忍プレイでもしてんのかな」「これ一緒にいる牧村のオヤジさんが可哀想だな」としか思えませんでした。
 デビルマン形態になっても、なぜか常時右腕を曲げて志村けんのごとく突き出したまま「ンモ!」「ンモウ!」「ウゴッ!」「ウォロビロォ!!〇〇(非常に滑舌が悪い声で読み上げられる敵名)!!!」しか喋らないので、この作品で人選に関わった人はちょっと大丈夫なのだろうかとハラハラさせられました。

 こういう演技力については、ミーコちゃん役の渋谷飛鳥さんが主演二人よりも少しドラマなどを経験していたおかげでいくらかまっとうな表現ができ、ミーコちゃんのパートだけは主演二人よりもずっと面白かったというところに如実に表れていると思います。
 つまるところこういう原作付き実写化では大抵そうですが、オリジナルドラマと違い原作というなぞるべき線が最初からあるがゆえに、それをなぞることができなかったり自分の肉体を伴った生の演技ができない場合「揺り戻し」のごとく余計に酷く見える、というわけですね。
 ついでに人選に関して更に言わせてもらうと、どうして主演二人がこうなったかもですが、なんでKONISHIKIがデーモン万歳とか言いながら黒ひげ危機一発みたいな死に方をしてるのとか、小林幸子このころから仕事の依頼に対して寛容だったんだなとかそっちの方にばっか意識が行くのでいちいち原作のシリアスさにブレーキを掛けられて不愉快でしたね。いや、鳥肌実の全力疾走は許すけど。



結論


 実際に見てみて、実写版デビルマンという作品は非常に扱いが難しいな……と感じました。

 それは、繰り返し触れましたが「クソ映画と呼ぶには意外にも原作の力でわりと観られる程度」なのでなんとも言えないという微妙さに起因していると思います。実写デビルマンはクソです。クソなんですが、これは実際に観て、よく考えた末に「いや、やっぱこれクソだわ」という結論にたどり着いた末のクソ映画なのではないか、と。"一周回る"必要がある。ですから、これを見ずに実写デビルマンのどこがクソなのかは掴みきれないですし、気安くデビルマンをたとえに出されたことに対してデビルマン警察が発足しかけるのも無理はないなと思う部分がありますね。僕もCASSHERNをクソ映画言われたときはそんくらいブチギレましたしね。ですから、「クソというものは何なのか?」ということをきちんと学ぶために、話題に出すなら実写版デビルマンは履修しておいたほうがいいと思います。
 もちろん、世の中には「実写デビルマンを観てないけど、ネタとして引き合いに出しちゃった」「観たくないけどネタにはしたい」という人もいると思います。そういう気持ちもわかります。ですが、これに関しては本当にシャレにならない奴なので。

 これを踏まえて、当初にもお伝えしたとおり「実写版デビルマンという映画をどう扱うべきか」について、自分なりの結論を出したいと思います。



実写版デビルマンは諸般の事情を含めて
ABC兵器に匹敵する非人道クソ映画なので
マジで安易に他作品との比較に使ってはいけない


これを他作品やそのファンに向けた場合
まちがいなく人類に血で血を洗う戦争が起こり
ボブ・サップの顔が三つに分裂し
鳥肌実が田んぼで全力疾走する




 以上が、この作品との正しい向き合い方になると思います。
 実写版デビルマンを引用することの危険性が正しく世に広まり、僕のように悲しみのあまり実写版デビルマンに特攻してハッピーバースデーを迎えるような犠牲者を出さないよう、切に願うばかりです。



 なんか記事書いててデビルマンという作品に対して本当に申し訳なくなったのでそのうちちゃんとCrybaby観ます。永井豪先生ファンの人、ごめんね。



(了)