12garage

主にゲームと映画についての雑記。

サイコパスとは何か

 もともとFC2で映画ファンくずれな記事を薄ぼんやり書いてたけど、なんか はてなに移転して一発目だから、少し真面目な記事を書こうと思います。

 

 タイトルからしてひねりも面白みもないエントリですが、まあ、表題通り今回はサイコパスについて詳しく学ぶ機会があったので、それについて触れることとしましょう。

 みなさんも小説やゲームのなかでチェーンソー振り回したり火炎瓶投げつけてくる危ないおっさんを思い浮かべたかも知れませんが、それについて、この記事では「ある程度正しい意味で」書いていこうと考えています。

 

 

サイコパスは別にやばいおっさんではない


 先ほど挙げたように、サイコパスというと人間の皮膚をめっちゃベリベリ剥がしたり、唐突に他人様を寸胴鍋に突っ込んで芋煮会するようなおっさん・おばさんを思い浮かべるかもしれませんが、そんなに年がら年中おもしろ人間やってるような人ではありませんし、サスペンス映画で主役張りまくるようなエキセントリックさはありません。

  文中のサイコパスという単語をクリックして、ハイパーリンクからはてブの辞書を見ていただければ簡単なトピックが載ってますが、あくまでも「人格異常」*1から発展した「パーソナリティ障害」の、さらにその中でも「反社会性パーソナリティ障害」という中から分裂したごく限られた部分で言われているのが「サイコパス」です。

 

 まず「パーソナリティ障害」というのは、「病気ではないけれど、行動や思考様式が普通の人とはかなり違い、生活に支障が出ている状態」のことを言います。この中で、わけても反社会的な傾向を持ち、米国精神医学会が定めた"DSM"という基準に当てはまる一部のパターンを「反社会性パーソナリティ」と呼び、

 さらにその中でもPCLという厳密な基準によって診断される、「自己中心的で尊大、操作的かつ衝動的、冷酷で無責任」な傾向を持つ人物が「サイコパス(精神病質)」と呼称されるわけです。

 

 まあとりあえず、ここまでで「サイコパスってのは見るからにイカれた猟奇的で危ない野郎というわけではないんだな」ということはわかっていただけたかと思いますし、ただ単純に「そういう傾向を持っているだけの人」なのでみんながみんな犯罪者になったり、断末魔で6番レジを勧めてきたり、スプラッター大好きマンだとかいうことも当然ないんですね。

 

PCL(サイコパシー・チェック・リスト)について


 前の見出しでも触れましたが、サイコパスであるかどうかを診断するにはPCLというチェックリストが必要になります。

 

 ネットをほっつき歩いたりツイッターをダラダラ見ていると、よくそのへんのサイトがいかにもな感じで「サイコパス診断」「ソシオパス*2診断」とかをPV数のためにゴロゴロ転がしていますが、診断するためのPCLは一般公開されていないのでこんなもん本当なら作れません。事実、そういうサイトには全編使うべきところを「診断項目の一部を使用」とか書いてありますしね。

 ちょっとここを別ウィンドウか別タブで見てもらいたいんですが、このPCL、普通の書店ルートで扱ってない上に研修を受けて資格とらないと買うことすらできないようになってまして、なおかつ向かい合って面接をやらないといけないんですよ。

 

ラベリング理論 - Wikipedia*3なんかでも言われているように、それこそ「あてずっぽうで誰かにレッテルを貼ることこそが犯罪が起こる引き金になる」かもしれず、ここまでやって厳重に扱われているPCLを勝手に一部引っ張って四の五の言ってしまうのは……うーん、ちょっと……話題程度のジョークサイトでも許されるラインではないですよね。

 偉そうにお説教するような立場でもないですし、僕もかつてはやったことがある身ですから、強くは言いません。ただ、犯罪の分析などに関わっておりそのへんの性格診断ごっこと一緒にしちゃさすがにアカンというレベルのようですし、まあちょっと、これからはやったり拡散するのを控えたほうがいいでしょうかね。

Hareの苦言


PCLを監修したRobert D.Hareは、「羊たちの沈黙」について、自身の著書の中で苦言を呈しています。

要約すると、「その本の中でレクターをサイコパスと呼ぶが、サイコパスはみな猟奇的な殺人を好み、連続殺人をするわけではない。法を破る理由も芸術家のようにカニバリズムに走りたいからというわけでもなく、もっと卑俗で即席な理由であることが多い。この作品は誤った認識を植えつけている」とのことです。

 

 まあ別にそんなん言われなくたって娯楽作品だとはわかってますけど、さすがにレディ・ムラサキとかいうおもしろカタコト未亡人にアジアン剣道を教わって殺人を繰り返すようなエキセントリックな人間は、なんというかサイコパスとかいう段階にいないような気がしますしね。

 フィクションは、体験していないことをあたかもしてきたかのように書くというところがとても重要ですから、こういったものをちゃんと現実とは切り離して見たほうが良さそうです。

 

 

 と、いうところで、今回は切り上げようかなと思います。

 余談ですが、サイコパス以前に、反社会的パーソナリティと診断されるには「特定の年齢」「過去の診断」などが求められたりしますので、この記事を書いている僕を含めてテレビやネットのメディアで「心理学」を語る人は、少々注意して見たほうがいいでしょう。

*1:シュナイダー,1934

*2:socio-path,つまり社会的病質者のこと

*3:Becker,1963