12garage

主にゲームと映画についての雑記。

僕たちはこえでも戦争をする。

まず断っておきたいのだが、この記事でかなり否定的な言葉を使ったりするけども それはこれを書く自分も含めてという意味、自戒を込めてなので、どうかご寛恕願いたい。 また、この記事はあくまで僕の感想であり、客観的なレポートというわけではない。 まとめサイトのようにアフィリエイトを得るために起きている問題を煽るわけでは決してないのでご了承願いたい。



ひとりぼっち惑星というゲームアプリが流行している。

これは宇宙にただよう「こえ」を、じんこうちのう たちからこぼれたパーツでアンテナを作り、受信して聞くというテーマの作品だ。
(じんこうちのう たちがかつて何をしていたかということについては、前作で少しわかる)

UIにとても切なげな雰囲気があり、BGMは版権フリーの楽曲から特にマッチしたものを使っており、デフォルトで受信できる「こえ」が素晴らしい出来栄えで、作者のセンスにただただ脱帽するばかりである。

そしてある程度アンテナを強化し、送信機を作るとこのゲームの肝である、ユーザーどうしの通信ができるようになる……のだが、それについていくらかの問題が生じている。

こえの選別


このゲームは、よくも悪くも、受信するメッセージを選べない仕様になっている。だから、非常に優れたショートストーリーが読めることもあれば、短文、日々の愚痴、ユーザーのトラウマ、悪罵を受け取ることもある。 また、他ゲームをパロディにしたものや、直接的にキャラクター名を出してなりきるものもある。

しかしながら、2日ほど前(6月24日)あたりから一部のメッセージについて「受けとりたくない」「書かないで欲しい」という要望が出てくるようになった。
(ただし、この時点ではそれほどこのような意見が多く出ているわけではなかったし、わりあいバージョン初期の段階から声を受信している僕も、十本受信してオリジナルストーリーが書いてあるものは三本くらいだったので、なんとも思っていなかった)

始まった学級会


「学級会」というのはスラングの一種で、ゲームやアニメのキャラクターのカップリング(二次創作で恋人同士にさせること)や、非公式な二次創作がメディアに露出することで起こる問題についての論争を指す。

26日、今日現在の午前辺りから案の定、これが起きてしまった。「こえを自由に送りたい」「こえを送信するときに(特定の要素を書かないように)してもらいたい」という二派が生まれてしまったのだ。

(誤解のないように書いておきたいが、まだ大論争というわけではない。ぽつぽつと現れ始めたというだけであるので、私はこのぶつかり合いを煽る意図はない)

そして現在、iPhone版で大規模なエラーが起こっており、送受信がやや不安定になっている。

私見


完全にとはいえないが、上はできるだけ自分の感情を排して書いた。

ここから下は僕の意見や主張であり、あくまでただのブログの記事ごときなので、笑って話半分に読むか、ブラウザをそっと閉じてほしい。


僕の意見を先に書いておくと、「こえを自由に送っていい」と考えている。これは、送られてくるメッセージを拒絶することがこのゲームのデザインを崩すことになるからである。

最初の6つのメッセージを読むとわかるが、「あること」がきっかけに地球の人類がいなくなった。 僕はその「あること」を踏まえてメッセージをやり取りしているので、「こえ」を拒絶したくないのだ。

いや、感情的には、わかる。罵倒しか載っていない嫌なメッセージはもちろんとして、愚痴や関係ない二次創作をここで見たくないというのは、わかる。雰囲気をこわさずにいたいというのはまったく私もそう思っているし、それに対して腹が立つのは全く自然だ。それは、個人の範囲なのだから感想として抱いていいだろうし、「嫌だ」と言ってもいいはずだ。

しかし、そのこえを書き手側に対して制限したり、受信できるものを選べるようにするという、この行為について考えてほしい。 これ、一番最初のメッセージで受け取った移民船の人たちがした「排除」「蹴落とし」と、同じじゃないだろうか? それこそ僕たちがいろいろ考えて、スクショ撮ってアップロードしたりした、あれじゃないのか?

しばしばSFは我々に寓話的なメッセージを送る。オーウェルディストピア小説、"一九八四年"はその代表的なものだ(もっとも、これを批判のために援用することはオーウェルの意図的にも本来良くないのだが)。そのSFにおける文脈を踏まえると、デフォルトで受け取れる6つの声はやはり、僕たちが学ぶべきものがある。感動したならばなおさらだ。

言い方は悪いが、こうやってユーザーの我々同士で争うことは、それ自体が「ななつめのこえ」になってしまうかもしれないのだ。

あまりにも悪辣なメッセージは弾き飛ばしたいというのは僕もそうだ。だが、じゃあ「悪辣なメッセージ」と「そうじゃないメッセージ」の境界線はどこ?誰がなにの権利で決めるの?という事になってしまうだろう。 こういう線引についていたずらに争い合うのは、特にこのゲームの雰囲気を大事にするならば、なおさら避けるべきである。

作者はこのゲームのこえについて、何も入力されていないこえについては取り除くことを決定したが、現段階ではそれ以外の制約を設けて介入してはいないということをよく考えてほしい。 つまり、6つのメッセージを読んだ我々の良心にメッセージの書き方を任せているのだ。できれば検閲じみた内ゲバは避けたい。

結論

私としては、本当は上記のとおり「まったく自由にこえを送信してもよい」と思っているが、それだけではやはり僕も、他の人達を切り捨てることになる。

そこで、

かなり無難な意見になってしまうが、ひとつの参考として折衷案を提供したい。 もちろん強制ではなく、任意でアイデアの足しにしてもらいたい、というものだ。

・キャラクターのなりきりについては、直接的にキャラの名前を出さず、「分かる人にはわかる読み物に仕立ててみる」
・オタク的な内輪ネタは使うにしても、「それだけでこえ全体を埋めたりしない」

・受け取る側も、「このこえはそういう設定のショートストーリーだ」と思ってみる

あくまで提案なのだが、このみっつをしてみれば、状況はかなり改善するのではないかと思う。 しかし、どこまでいっても受け取る側の印象によるので、どう良くなるのかは未知数ではあるが……。

いろいろと説教臭く、過激なことを書いてしまったが、どうかこれだけは強調させてほしい。


我々自身が、プリセットにつづく「ななつめのこえ」になるのは極力避けるべきである。なぜなら、我々人間は「ぜんぶがだめではない」という、彼の信頼を預かっているからだ。僕達が最後に残ったこえを使ってまで戦争するのは、あまりにもばからしい。