12garage

主にゲームと映画についての雑記。

病気を持ってからすっかり日課になった夜の散歩をしていると猫に出会った。大柄な野良猫だ。

しきりに身体を掻いたり背中を地面にこすりつけているのだが、猫は普通いくら痒かったとしても人の前で腹を見せるとは思えない。
これは、と思って頭に手を持っていってみると自ら頭をこすりつけてきた。相当人に慣れているようである。

猫は、良い。猫の媚び方というのは自分本位だが腹が立たない。不安にさせてくることがない。

自分は生来小心者で、加えていろいろと疑い深い性格なので、他人に無償の愛とかいう奴を向けられると相手の正気を疑ってしまう。自分のどこにそれほどのものを向けられる理由があるのかわからないし、相手に身を委ねられてもどう扱うべきか責任を感じて厭な気持ちになる。
かといって、世の大勢の人が楽しんでいる恋の駆け引きとかいう奴もダメで、なぜわざわざ商取引みたいなことをして人と関わらにゃあならんのだ、と面倒くさくなるし、高圧的に恋愛恋愛言われるのも鼻について苛々する。

猫、とりわけ野良猫は、基本的に自立している。彼は彼の生活を自分でなんとかしているから、爪を研いだりするのにいちいち了解をとりに来ない。人間にかまって欲しいのは、そのときに寂しくて必要だから世話してほしいだけで、あとは飯時くらいしか何かを要求してくることもない。
自分のすべての面倒を見てくれと言いにくるのではなくて、ただ猫は、遊びたいから遊ぶ。

私は、それがとても心地よい関係性に思える。常時相手とつながってそのすべての面倒を見ろだの、お前のすべてをジロジロと監視させろだのと言われたら発狂してもおかしくない。
猫はそれを求めないし、彼についてすべて管理させることもしない。猫と人間は並び立った個と個である。これほど素晴らしい関係はない。

私は一通りそんなことを考えながら、気分よく散歩を済ませて帰宅すると、まずは念入りに手を洗うことに決めた。
猫をかまっても、私まで彼と一緒に痒くなる必要はないからである。