12garage

主にゲームと映画についての雑記。

「13時間 ベンガジの秘密の兵士」感想

13時間を見たんで、久しぶりに映画の感想を書きます。


リビアベンガジに潜伏するCIAのもとで働く雇われ兵士"GRS"、「公式には存在しない」たった6人の精鋭が大使館襲撃に立ち向かう物語。

この映画、すごく重かったです。
主人公たちの疲弊していく様子の細かい描写もですが、やはり実話ベースなのでフィクションみたいに適当なオチを付けられないし、どちらかだけが悪役という終わりにもできない。苦々しさを印象づける作品だったと思います。

映画のポイント

最悪の状況で、援軍なしで戦い続けなければならない男たちの様子がすごいですね。圧倒されます。

まず主人公たちGRSの上司であるリビアのCIAがもうダメダメ。秘密の基地なのにちゃんと隠してないし、地元の信用できるんだかできないんだかわからないような奴らも雇ってて最悪(しかも案の定、雇われてた連中は真っ先に逃げ出す)。CIAたちも文官がほとんどで、銃を扱える人間が少ない。民兵が武装して紛争を起こしてるっていう状態なのにちょっとしたライフルやピストル、ライトマシンガンくらいしか無く、航空支援は受けられない。秘密で来る予定の大使はマスメディアにバレてる。もうすでに戦う前からこれだけヤバい材料が揃ってる。

案の定襲撃を受けるんですが、さらに本国から応援を受けられない事が発覚。たとえば、これがちゃんとした軍人だったらすぐに応援が来て助けてもらえるんですが、GRSは非公式な存在なので助けてもらえないんですよね…。そんでもって雇ってた奴らは逃げ出すわ、リビア人の見分けがつかなくて味方なのか敵なのかわかんないわ、もうグッチャグチャの状況で戦うしか無い。まさに地獄のような映画でして、すごく見応えがありましたね。

また、昨今のローン・サバイバーなんかでもありましたが、怪我の描写がきちんと存在するのがすごかったですね。主人公たちがいくら撃たれても怪我しないような無敵超人ではなく、疲れやアドレナリンの引きで弱気になったり、腕がもげたりするのが非常にリアルでした。


マイケル・ベイじゃないマイケル・ベイをめざしたマイケル・ベイ

こういうと解りづらいというか、内輪感のある言い方になるんですけど、「マイケル・ベイが頑張ってマイケル・ベイ風味をなくそうとしたマイケル・ベイ映画」だと思います。エンディングでリビアの人々からの謝罪を入れるなど、アメリカ万歳風味を抑えつつ、リビアの人たちの描写にも力を入れていて好感があります。なにしろ犠牲者が出ている実話なんで、さすがにトランスフォーマーみたいな演出にはできないわけで、かなりシリアスな映画になってるんじゃないかと。
ただ、そうはいってもマイケル・ベイっぽくやっぱり演出過多な部分が出てしまっているのも事実で、事件の発端が差別団体の作った映画だということがほとんど言及されてなかったり、カーチェイスシーンなんかはカメラを振り過ぎで単純に見づらかったりするし、迫撃砲のシーンなんかはドラマティック極振りで、そこらへんは完璧じゃないなと思ったりもしました。

ただ、「俺達は、来る必要のない国で、する必要のない戦いをしている」というセリフはきっちり問題を抉っており、かなりシブくていいなという印象がありましたね。

総評

マイケル・ベイとして想像される撃ちまくり映画ではなく、バースト射撃をしたりしている地に足のついた戦闘描写が素晴らしかったです。

昨今の戦争ドキュメンタリー映画の流れをかなり汲んでいる作品で、とてもいい映画だと思いますね。本編に入る前に、舞台であるリビアのぐちゃぐちゃ具合についてもきちんと触れており、ブラックホーク・ダウンみたいな突き放した感じがない。
細かい部分で惜しいところはあるんですが、「武器が足りない、人手も足りない、応援もない。最悪の状況で、人間としてやるべきことを優先した男たち」というヒロイックなテーマと、「独裁政権だからと言って勝手に首を突っ込んで、民主化の後の面倒まで見てやらない勝手なアメリカ」という風刺をきちんと取り入れていてバランスが良く、見ごたえがあるなと思いました。
あと、個人的にはGRSの準軍事(パラミリ)感がツボでしたね。「Tシャツ・半ズボンのままチョッキとチェストリグ、ヘルメット」っていう出で立ちがなんとも言えない味があってよかった。

劇場公開されずにビデオスルーされたのでマイナーな感じがありますが、内容は胃がキリキリするくらい緊張して手に汗握りました。パラミリ好きにはおすすめですね。