12garage

主にゲームと映画についての雑記。

薬が中に入ったケースの中の薬が中に入ったケースの中の薬が - Milk inside a bag of milk inside a bag of milk(とoutside) 感想



(2022/08/01追記)

※何かの配信を見てこの記事にたどり着いた人へ

 まずはここに来てくれてありがとうございます。長い記事ですがよければゆっくり読んでください。
 最近、配信者の方のプレイを見た方からと思しきアクセス増加があり、非常に有り難いことだなと思います。配信を拝見してみるととても世界観を大切にされていて、どの配信者さんもこのゲームを丁寧にプレイされているなと思いました。

 ただ、本来プレイ済みの方に読んで頂くつもりで書いたこの記事について、最近「おれがネタバレ記事を書いたことで、本来Milk inside...とOutsideを配信で興味を持ってプレイしそうな人口がこの記事のネタバレで済ませてしまい、遊ばれる機会を奪っているのではないか?」と葛藤し頭を抱え始めました。そう、公式が得るべき利益を奪いたくない我らが巨人、タローマンである

 おれからのお願いなのですが、そこまで高いゲームでもないので、よろしければinsideとoutsideの2作をプレイするか、怖くて遊べなさそうならお布施として買って公式にお金を落としてくださると幸いです。なんせinsideは百円だしね!ミルクより安い!!!!!


(2022/08/05追記)

 一部一般的でなかったりわかりにくい言葉に注釈を入れました。っつってもおれははるか昔に臨床心理かじってドロップアウトした人間だからこまかい間違いは許してクレメンス


(2022/11/11追記)

 めっちゃ追記が多くなってきたな…。

 ニンテンドーSwitch版の発売おめでとうございます。
 おそらく本記事にアクセスされるなかでSwitch版を遊んだ方もおられると思うのですが、こちらの記事はPC版の翻訳に準拠したものとなっています。

 Switch版はおれ自身遊んでいないのでなんとも言えないのですが、SwitchではパブリッシャーのForever entertainmentによってPC版とは違う翻訳(機械翻訳?)が付けられていると聞き及んでいます。

 どちらが優劣というわけではないですが、こちらではSteam版での日本語訳をベースとしておりSwitch版での翻訳はちょっとこの記事ではカバーしきれていませんのでご了承ください。


(2022/11/23追記)

 追記の後の追記の後の追記の後の追記の後の追記の後の…

 Switch版の和訳が改善されたようです。これでより摩訶不思議な世界に没入できるね!
 対応してくださったスタッフ陣のみなさん、ならびに原作のNikitaさん、本当にありがとうございました。



〜以下本編〜

 以前からなんとなくserial experiments lainのような雰囲気があって良さそうだな、でもなんか明らかそっち系のテーマだから英語を読むにしてもめちゃめちゃ難解そうだな……と思ってウィッシュリストに眠らせていたMilk inside a bag of milk inside a bag of milkとMilk outside a bag of milk outside a bag of milkに和訳がついたぞ!とプレスが入ったので小躍りしながら買って読みました。

 本記事では当該タイトルのネタバレがありますので、できれば二作プレイしたあとにお読みください。




 結論から話すとすげ~良かったです。おれは好き。こういうの。ただすんげ~~~~~~~~~疲れる。主人公の会話のチャンネルに合わせて話を理解するのがめちゃめちゃしんどかったし怖かった。これ翻訳する人大変だったろうよ。



note.com


 大変だったみたいです。そらそうだ。
 (いろいろと重要な情報が書かれているのでプレイ後に一読することをおすすめします)

 Milk inside...の翻訳者MohiMojitoさんに言葉を送るとするなら、偉業を成し遂げられましたねといったところでしょう。少し前にDisco Elysiumといういきなり脳幹が話しかけてきたり大量の修辞学講義が飛び出してくる翻訳者殺戮マシーンみたいな作品が和訳完了したニュースがあったのですが、Milk inside...も翻訳難度的にはあれに劣らぬものだったのではないかと思います。あんたはえらい、日本一や。
 そもそも言葉のサラダ*1状態に陥っている主人公の話をニュアンス汲みつつ翻訳するのはしんどい以外何物でもなかったのではないかなと…。主人公ちゃんが延々と脈絡もなくモロトフカクテルで手当たり次第に他人の言語野に放火してくるような作品なので、ミニサイズのゲームとはいえそれに直撃しながら作業するのはだいぶキツかっただろうと思いますね。こうして翻訳中に判断に迷ったところや注意すべきところを編集後記として残しておくところも誠実で、良い仕事をされています。本当にお疲れさまでした。


 ということでまずは前置きを綴らせていただきましたが、以降感想を書いていきます。


もくじ


insideの感想


 ひとさまの頭の中にお邪魔するゲームということで"Johnny"という名前で始めました。あとから考えてみると「おれだったらこんなアナーキストみてえな名前の薬ぜってー飲まんな」と思いましたね。

 まずこのゲームをプレイしながら常に感じていたのは「怖い」という気持ちでした。というのも作中で主人公が"O"という輪の形状にひどく恐怖を感じ、それをプレイヤーに見せてくる(!?)んですが、そのシーンから先は何が飛び出してくるのかわからず本当にハラハラしました。
 よく、恐怖の本質は「未知」なんではないか、対象のことがわからないから怖いのではないか……なんていう説が人口に膾炙しておりますが、それはやはりこのゲームにおいても言えるなと強く感じたところです。キャラクターが第四の壁を超えてプレイヤーを認知し、いろいろな手立てでこちらを揺さぶってくるメタ的な手法とかスクリプトを使ってビビらせてくるゲーム自体はまあ確かによくあります。自分もいりす症候群やDDLCなどそれなりに目にしてきましたが、なんというか……このゲームの"未知"はそれとはちょっと違った。そもそも主人公の女の子はプレイヤーとは違う世界で違う文法を綴りながら生きているので、たとえば「いきなり怖いものを見せたら相手は嫌だろうな」とかそういうことは考えていないわけです。小説などに信頼できない語り手*2という手法がありますが、この子の場合はマジで一秒後になにをしてくるかわからないのであらゆる意味で信頼できない語り手と言えるでしょう。いくらおれがイマジナリー存在だからって情け容赦なくいきなり恐怖映像を見せてくるのはやめてね。

 しかし、だからこそ自分とは異なる世界で生きる主人公が興味深くもあります。こうした真っ赤な世界の中でどう生きているのか?感覚が自分とはどう違うのだろうか?といったことを当人の脳の一角に座って一緒に眺めてみることができるのは本作のもっとも面白いところでしょう。見るものすべてが真っ赤に染まり、ヒトが化け物にしか見えない……といった視覚の問題は、沙耶の唄とか火の鳥復活篇に近い彼女の孤独な世界を思わせますね。
 また、彼女の時間の感覚もなかなかうまい描写だなと思います。彼女にとってはものすごく時間が早く過ぎてまるで消し飛んだかのように描かれるところもあれば、レジ前で二日が過ぎたとも語っており、明確に自分と違う世界で生きていることが感じられます。これは要は彼女の体感時間が非常に伸び縮みしやすいということなのではないかと思っています。
 主人公はいろいろな行動に難儀してやや時間をとったり、過集中*3で時間を気にせず何かをしてしまうのだろうということを「閉店時間が迫る」というかたちで表現していたり、頭の中のプレイヤーに指摘されることでそれとなく示している。恥ずかしくて早く過ぎてほしい一瞬が引き伸ばされてあまりにも長い時間のように思われるなど、彼女の認知が徹底的に他人と違い、生きることの難易度がめちゃめちゃ高いということが感じ取れます。
 




 おれはそんな脳天炸裂している本タイトルに戦慄しっぱなしでしたが……でも、主人公がぽつりぽつりと「世界がこうなった日」について語ってくれるシーンは本当に良かった。ものすごく嫌な記憶なのにも関わらず、プレイヤーに真正面から向き合って、なんとか"こちら側"が理解しやすい言葉を選んで語りかけてくれる。この子の素の性格はとても誠実だったんだろうなということが伝わってくる場面でした。「この子は長い間この赤くて化け物だらけの世界にひとりで生きているのに、何もしてやれない。どうにもできない。おれはこの子の話を聞くことしかできない」そんな切ない気持ちになりました。


 でもいきなりスケキヨみたいなクソ怖いオカンをぶつけてきたのは許さんぞ!!おのれNikita Kryukov!!!!


outsideの感想



 まずRina Watanabeさんと高橋温さん、翻訳お疲れさまでした。選択肢や分岐も増えて大変だったと思いますが、どこも雰囲気を崩さない良い訳でした。ありがとうございます。

 うーん、outsideのオープニングめちゃいいよね。こんなかわいいお帽子を被ってたのねアナタ。
 lain風味を感じるところもいいけれど、前作insideでの主人公の言動をプレイヤー抜きで見せてくれることでまた違った印象が出てきますね。こうして外側から俯瞰してみると……まあその、有り体に言って「ヤバい人」なんだけど、彼女は彼女なりになんとか頭の中の声としゃべって行動しようとしてるんだよね、と前作を経験したプレイヤーにはわかる。



 outsideでの主人公を見ていると、この子のイメージが前作とはガラッと変わりますよね。いや、言っていることや考えていることは前作のままなんだけど、彼女なりにこの世界と折り合いをつけようともがいているのがわかってくる。
 insideの感想で主人公ちゃんを「自分と違う世界に生きる人」と表現しましたが、それはつまり、「自分以外の誰も認識できず共有できない異質な世界を、なんとかひとりで戦って開拓している人」とも言えるわけで、方法は我々から理解し難くとも彼女なりにこの異常な環境に勇気を持って立ち向かおうとしているのだな、と尊敬の気持ちが湧いてきます。
 たとえば「なんの理由もなく自分の部屋のど真ん中に青白い眼孔の化け物が湧いてきて居座りつづけるホラーゲーム」がいきなり始まったらおれはだいぶクソゲーだろと思うのですが、そう考えてみるとこの子はそれをなんとかやり過ごそうといろいろ試して頑張ってたんだなと。

 本作では前作と打って変わり、彼女の外側(彼女の自我と外の世界の境界と言ったほうが近いかも)を部屋においてある私物を通して深掘りしていきます。それを辿っていくことで「なぜ彼女が突飛なことを言い出すのか?」にある程度根拠があることがわかり、いままでの言動が腑に落ちてより作品世界に入り込めました。


 置いてあるものを動かしてホタルを探すのは禁止!と言い出したときは「おッッッ前なあ………」と思いましたが、話を聞いていると「この部屋に置いてあるものの位置を覚えるのに数ヶ月かかった」(≒真っ赤でよくわからない状態から「部屋」と認識できるくらいに覚えた)とサラッと凄まじい努力をしていることをこぼすので、えっ……ちょっとそれは人生ウルトラナイトメアすぎへん…?という眼差しになりました。本人が言わないだけで彼女なりに合理的な理屈があったりしんどい労力をかけて生きていることがわかる、良い場面だと感じます。
 前作では彼女と話して牛乳を買えるように導いてあげるのが物語の主題でしたが、本作ではホタル探しを通じてやりとりをすることで、彼女の頭の中でグルグルと絡まっていきなり結果だけ出力される思考を解きほぐし、「たぶんこういう事があったから主人公はそうすることになった」と順序立てることで認知を整理してあげる、一種の認知行動療法*4的なゲームと言えなくもないですね。
 


 ただ、プレイしていてしんどかったのが、本当のことを知ろうとすると彼女が思い出したくないことを掘り返す必要があるということでした。ラップトップやカバンの話がそうですね……。
 学校での思い出について喋っているのに、机に向かって勉強したり(ロシアの学校にあるかわかりませんが)部活やクラブ、友達の話が出てこずにベッドの話をするあたりで「あっ(察し)……この話題触らんとこ…」と一周目は気を遣って問いたださない選択肢を選びましたが、案の定あとで掘り返してみるといろいろ重要な話が出てくる。
 前作の流れからして一見主人公がこのような混沌のなかで生きているのはお父さんの事件からではないかと思ってしまうところですが、「全部うまくいく」エンドで主人公ちゃんが鏡台の前で醜形恐怖*5じみた観念にとらわれている夢を見たり、学校に迎えに来たお父さんに対して本当は暴れて引っ掻いたりしてしまっていたことから、「お父さんが亡くなる前から主人公ちゃんには何かがあったんじゃないのか?」と気付かされます。また、はじめからここまで酷い症状ではなかったけど、実は追い打ちをかけるような出来事が主人公の身に降り掛かっていた…など、興味深い過去が暴かれていきます。


 しんどいんですよね…。主人公がものすごく辛そうな顔をしているのにわざと嫌味な言葉を投げかけなければならない。実績埋めのためにいろいろな選択肢を選んでいると、「本当のことを知るのは、わざわざこの子を苦しめてまでするほど重要なんだろうか」という考えがだんだん頭をもたげてきます。話すことばかりがコミュニケーションだと思いがちだけど、何も訊かないで隣で聞いているというのも"会話"のひとつだよな、としみじみ思いました。「耳を傾けて寄り添う」ことと「傷つけるリスクを抱えてでも相手を知る」ということのバランスは難しい。
 そういった葛藤も含めて、このゲームの体験は独特でした。



insideとoutsideで「会話ウィンドウの外」にあったこと(考察の紹介)

 このゲームは認知の歪んだ少女の頭の中を介して物語を展開する作品です。なので、御存知の通り主人公は現実に起きたり過去あった物事を正確に認識・説明していません
 また、第一作の翻訳者であるMohiMojitoさんがおっしゃるとおり、ロシア語が原本でありほかの言語はあくまで翻訳されたものですので、細かなニュアンスを伝えきれていない可能性があります。


 そこで、このガイドを紹介しておきます。

steamcommunity.com


 こちらはOutside...のほうに掲載されているコミュニティのガイドです。

このガイドは、「Searching for Deep Meaning Syndrome」*6が両ゲームを要約し合理化しようとした結果であり、気づきにくい点や見逃しやすい点(私見)も取り上げています。書かれていることが全て最終的な真実であることを保証するものではなく、あくまで個人的に納得のいく理論であり、なぜこのようなことがゲームに盛り込まれたのかを説明するものです。それでも、ゲーム内のすべてを説明することはできませんが。ネタバレが多いので、すでに2作をクリアして、答えが見つからずに迷っている人に読んでほしいです。(序文をDeepLで翻訳、引用)

 作成者の方がおっしゃっているとおり、これはあくまで公式解釈や回答ではないですが、ロシア語の原典の記述をチェックして英文と対訳しながら説明したりと非常に細かく分析されている興味深いガイドです。気になる方はぜひDeepLやスマホOCR機能*7にかけて読んでみてください。
   …といってもそのまま何も言わず終わるのはなんだか寂しいので、ガイドの内容のなかからすこ~しだけパクっ…………ご紹介しておきます。
(steamのレビューやガイドには著作権が発生しているので、丸写しとかはしません。君の目でぜひガイド本文を確かみてみろ!

①プレイヤーって何?

 プレイヤーは作中でおもにイマジナリーフレンドのように振る舞い、主人公の話を聞いたり手助けをする存在です。ただ、彼女が完全に頭の中で作っただけのお友達かというと実はちょっとひっかかるところがあります。

 まずinsideの最初の方で、プレイヤーは自分の名前を入力することになりますね。そこんとこを原文のロシア語でプレイするとこんな感じ。



 なんかカッコ書きで妙なことが書いてあるのがわかるでしょうかね?……フフフ……つまりこれは………いや、おれもわかりません。キリル文字読めないので素直にOCRで訳しました。

 意訳すると「名前を書いてね(箱にあるように)」、となります。なにか含みのある言い回しですね。我々は頭の中の友人なのに名前を書くんですか?手が無いのに?単に"名前を教えてね"でもいいのに。そして「箱」って何?という疑問が湧いてきます。


 次に、insideの途中で選択肢によってはプレイヤーは主人公に見限られることになり、まあつまり捨てられることになります。
 ……そのとき、次のプレイでの名前の入力で同じ名前を打った人はわかると思いますが、「またあなたなの?」と言われますね。



 劇中の彼女の話やお母さんのセリフからもわかりますが、主人公はだんだん症状が悪化しており、薬がよく効かないのでいくつか新しい種類に変えて試しています。なんだか作中の我々プレイヤーの扱いと符合しますよね。
 また、作中ではだんだん症状がひどくなり自動車のことを熊だと認識するなど主人公の見ている幻覚が悪化していきますが、これは「薬の効果が切れてきた」状態ではないかと考えられます。この後に続くOutside...の冒頭でも急に記憶が飛んだり重たい幻覚や激しい不安とわりかし重篤な症状を見せており、はじめは女の子のモノローグだけで語られ、彼女が服薬するまでハッキリとはプレイヤーが出てきません。どうやらプレイヤーは薬の効いているあいだに出てくる存在のようです。


 以上を総合すると、おそらくプレイヤーの正体は単純なイマジナリーフレンドとかタルパではなく、「彼女が飲んでいる精神薬の作用」ではないかという推察ができますね。我々が最初にタイプした"名前"は精神薬の箱書きといったところでしょう。
 Milk outside...で主人公がハキハキと喋って前作よりかは考えがまとまっているように見えるのも、服用して効果が出始めたすぐあとで、薬がよく効いているから……と思うとすんなり腑に落ちます。


②牛乳について

 主人公はinsideで牛乳を買い、そしてoutsideの冒頭で牛乳を眺めたあと、お母さんに匂いを嗅がれて強引に腕を掴まれ、長い爪から「毒」を注入されます。そして「二度と牛乳を飲まないと言え」とよくわからない脅迫を受けましたね。


 ここのくだりは主人公の幻覚も相まって大変サイケなシーンなのでわかりづらく、一周目はじめて読んだときはヒグイデみてえな不気味マスクの毒親に文字通り毒を注入されたんかなと思ってしまいますね。とはいえ実際のところ「長い爪」が注射器であろうことは想像がつきます。

 おれはここで「娘がすぐ寝るように睡眠薬でも打ったのかな」と思っていましたが、ガイド作成者さんはいくつかのポイントに注目して推理しています。


・「二度と牛乳を飲むな」と念押しされていること
・いつものお決まりになるくらいよく起きていること
・お母さんに強引に喉を押さえられたりしている「と思った」こと


 ここでキーになるのは「牛乳を飲んではいけない」ことです。
 牛乳を飲んではいけないとしつこいくらいに母親から言われている、何らかの注射を打たれる、つまり「主人公は牛乳アレルギーを持っている」とするとすんなり説明がつく…と考察されています。
 主人公の主観ではまるでお母さんに毒を打たれたせいで体調がおかしくなっているのだ、暴力を振るわれているのだと思いこんでいますが、牛乳を飲むなという文脈からするに本当は減感作療法*8としてアレルゲンショットを打って身体を慣らしているだけではないでしょうか。ただしアレルゲンはアレルゲンなので「押さえつけられたように」咽頭が腫れて呼吸しにくかったり激しく発汗したりしているのではないか……、ということですね。アレルゲンショットは長い期間繰り返し打たなければならず、主人公はこのやりとりをひどく嫌っているがゆえにこのように見立てているのかもしれません。*9


 普通であれば牛乳そのものを手の届かないところに保管するなり、家に置かないなりしておけばそこまで神経質に牛乳アレルギーを排除しなくても良いと思いますが………牛乳については重要なくだりがありましたね。



 お父さんが飛び降りた日、わざわざ牛乳買ってるんですよね……。

 他のアレルゲンならともかく牛乳なんてメジャーな飲み物ですから、お父さんも娘の体質についてはわかっているでしょう。娘がアレルギー持ってるって知ってて牛乳買ってそのあと飛び降りてるってことは、その牛乳で娘をどうしようとしたか容易に想像がつきます。帰ってくると夫はもはや人の形も残っていない無惨な姿に、家に駆けつけるとアナフィラキシーショックを起こしてもがき苦しむ娘が……。忘れようにも忘れられない、むごい光景ですね。お母さんがわざわざアレルギー治療を継続してさせているのは大方そういうことでしょう。

 お母さんがなぜ事件当時に家にいなかったのか、お父さんがどうしてそんなことをしようとしたか。なぜ命を絶ったのか。細かいところが気になりますしいくつか動機は考えられるもののそこから先は明言されていないので、真相は藪の中といったところですが…。


 
 ……といったことがガイドに書かれています。ほかにも緑色エンドや階段エンドなどの各エンディングの意味なんかも考察しているみたいだから読んでみてね! (他力本願)
 ただ、繰り返しますがあくまでいち考察であり、皆さんが読み解いた結果を否定するものではないですし、考えるのを楽しんでいる人に無理に押し付けて上書きしようとしたりすると「やめろぉーーーッッッ!!考察は他人を傷つけるためのものじゃねえ!!!オレと考察バトルで勝負だ!!!!!」とかなるのでやめましょうね!


 さて、もういい加減すごい長さになってきたのでこの辺でお暇することにします。作品が面白かったあまりにダラダラと書いて気がついたら一万字くらい書いていました。この記事を書くのもプレイ直後から四日ぐらいかけていて仕事中にずっとこのことばかり考えていたのでこの記事を書きました。そのために四日ぐらいこのゲームのことを考えています。なので気がついたら一万字くらい書いていました。それは四日ぐらいこのゲームのことをずっと考えていたからです。だから一万字くらい







<寝ろ>

<はい、ママ>

*1:Word salad. 文脈がバラバラにちぎれて不自然な順番で繋がってしまっていること、また、そういった文。AIの言語学習の場面でも使われることがある

*2:ノローグや地の文を書いている人が本当のことを言っているとは限らない、という表現手法。

*3:なにかに没頭したり集中しすぎて周囲の情報がまったく頭に入ってこない状態、症状

*4:その人の考え方の癖や、ものごとの受け取り方にあるトラブルを自覚してもらい、精神的にしんどくならない考え方ができるように練習する療法

*5:自分の顔や身体が醜いのではないかという強迫観念に追われている状態

*6:ガイド作成者さんが自分自身をさして「意味を深堀りしなきゃ居ても立っても居られない症候群」と言っている自虐だと思われる

*7:文字をカメラで読み取ってテキスト形式にしてくれる機能。アンドロイドの翻訳アプリとかに搭載されてるよ

*8:アレルギーの人に微量のアレルギー源、つまり「アレルゲンショット」をわざと注射して身体を慣らし、最終的にアレルギーを治療するという治療法。ただ、ちょっととはいえ当然アレルギー源を身体に入れているので注射したあとアレルギー症状が出る。一般にダニアレルギーを克服したい人などに使われることが多い

*9:ちなみにガイド本文では、ガイド作成者さんが次点でエピペンの可能性も挙げている。エピペン→アナフィラキシーショックを起こしたときに応急処置で打てるようにしてあるアドレナリン注射器