12garage

主にゲームと映画についての雑記。

Hotline miami クリアしたよの日記

遅ればせながらHotline miamiとwrong numberをSteamで買ってクリアしたのでいろいろと考えてます。
まだちゃんと全部の伏線を理解出来てるわけじゃないですし、僕自身の頭が足らず理解できていない部分があると思いますが、とりあえず現段階で思ったことをまとめたいので書き残しておきます。あと、プレイして内容を知っている前提の記事ですので、プレイ中ならばクリアした後にお読みいただけるようお願いします。

もちろんモロにネタバレなのでそういうのが気になる方はスルーをお願い致します。

Hotline miami


まあまず、初代をプレイした時点で考えたことをメモしておいたので、書いていこうかと思います。
ダイジェストでお話すると、「助けだした女の子を殺されたからロシアン・マフィア殺しまくったけど、ぜんぶ現実ではなくjacketくんの妄想だよ」という事ですかね。「jacketくんはBikerと出会った時点で死んでるし、その後のことは全部妄想だよ」っていう。


……しかし、実際にプレイすると引っかかるところがかなりある。


特に個人的に違和感がある……一番納得できないのは、「死んだ人間が妄想なんかできるのか?」ということでした。
確かに、jacketが妄想のなかでBikerを殺してから家を襲撃されるまでの間に、死んだ人間が話しかけてきたりと異常な現象が起こり続ける。これはまあ、間違いなく妄想でしょうね。実際にはBikerを殺せていないし、その後の数回のマフィア虐殺は店員のセリフのように「本当には起きていないんだよ」ということになる。

ただ……これだけではまだ「jacketは死んだのか?」というところは断言できない、と感じてました。
後半でBikerに負けて頭を踏み潰され、破裂したのは本当に前半のjacketと同一人物なのだろうか?ということですね。
また、病院で目覚める前にニワトリ頭の人物と会話して頭が破裂したり、そのくせちゃんと病院で目覚めたのも謎です。


ここで考えたのが、「jacketとBikerのいる世界が微妙に違うんじゃないか」という仮定。

たとえば、「前半のjacketはBikerと出会っていない(のでBiker戦含めて家襲撃まで妄想の)世界」だが、「後半のBikerはjacketを殺した世界」と仮定すると非常にすんなり行くような気がします。

ありがちな考え方ですが、「どちらが本物、ではなく、どちらも本物」だとしたら、「妄想している主体」であるjacketが生きていることになるので、病院から後のシーンまで説明することができるわけです。
要するに、妄想をランさせておくためのホスト本体(jacket)が平行世界としてふたりいて、片方はBikerによって潰れ、片方はちゃんと稼働(生存)してるってことですね。

Bikerを殺してないのにBikerを殺したと妄想することで世界に明らかに歪みが出てきたわけですが、病院から脱出した後は逆に歪みが無いので、警察署を襲撃してマフィアのボスたちを八つ当たり気味に虐殺したのは事実ということになるはず。
(Bikerを殺した以降の後半がまるっきり妄想だとしたら、病院の後のシーンでもちゃんと歪みが出るはずじゃないですか)



と、以上が、お恥ずかしながら初代をプレイしたときの感想ですね。
で、以降がwrong numberをプレイした感想です。

Hotline miami2 Wrong number


まあ、綺麗に答え合わせをされました。素直に言うとちょっと合ってて嬉しかったんですが、やっぱり僕ごときの考えでは及ばなかった。
幻覚で乱れに乱れた「Biker戦の後」こそがwrong numberにおける正史で、まともに見えた前半のほとんどが幻覚だったわけですね。前半に整合性があったのは、jacketにとって認めがたい真実には何も触れていないからだった、ということだったようです。

さらに一見、wrong numberは、事件の外野どもによる(バカにしてるわけじゃなく、あくまで比喩としてですが)余興や茶番のようなストーリーが展開される上に、最後はまるごと吹っ飛ぶわけですが、このなかで異色に感じられるハワイ編こそすべての根源について触れていました。

そう、ずっと疑問だった「黒幕」についてと、
「お前(jacket)は人を傷つけるのが好きか」という問いの答えですね。

50の祝福を作り上げた「黒幕」については各種考察サイトでも言われ尽くしているように、Beardたちの上官で間違いないでしょう。あの時代にあるはずがない三本線のマークがあるということは、つまり最初に作ったのがあの人だからですね。動物のマスクとかも被ってたし。


そして、後者の問い…「お前は人を傷つけることが好きか?」の答えですが…
僕の個人的な感情が入ってしまうので確実とはいえませんが、多分"違う"ということになるでしょう。
確かに彼は暴力的で、Fansのように血に酔っている部分もあるかもしれません。Pardoのように、自分の記事がセンセーショナルに書かれることに関心があったでしょう。しかし根本の理由は、全く違ったのではないでしょうか。
彼の行動のすべては、Beardのための弔い合戦だったわけです。だからホームレスを殺した時に嘔吐したし、Hookerを放っておけなかったけども、ロシアンマフィアは虐殺して遺体をめちゃくちゃに損壊した。これで彼の、デタラメに見えた行動原理に一本の筋が通る。やや八つ当たりの感はあれども、彼は別に殺しを楽しもうだの、自分を正義のヒーローだのと思っていたのではなく、最初から復讐と怒りのために動いていたということですね。

それに気づいてから初代miamiを振り返ると、あの暴力のすべてが違った形に見えてきます。
日々の生活が退屈だったからでもなく、金が欲しかったからでもなく(退役軍人には十分な年金が出ますし)、名前を売りたいわけでもなく、どんなに傷ついてもただ一心不乱に、今はいない親友のためにロシア人の血を捧げ続けている。
彼は"50の祝福"に騙されて、Bikerのようには真実に辿りつけませんでした。でも、最初から彼の目的は真相ではなく復讐だったわけですから、(Hookerの件はあるにしろ)本当のことを知ったところでロシアンマフィアを殺し続けるのは変わらなかったでしょうね。



wrong numberで間違っていたのは確かに登場人物全員で、このゲーム自体が何かの間違いだ!ということも言えるでしょう。
でも、初代のBiker編が終わった後…… jacketの事情を知らないままに"ただのサイコ野郎"だとか、本当のエンディングではないとか、勝手に決めつけていたのは誰?

つまり、"あれで良かった"ということです。Biker編をクリアした僕らプレイヤーが、「jacketはただ暴れただけだ!事態の真相がわかってないじゃないか!」と思うのに反して、あれこそが彼にとってのトゥルーエンドであり、あれこそが納得して"あの写真"を手放せる結末だった。彼のことを「わかってない(wrong)」のは僕達プレイヤーの方だったのかもしれません。



総評して、本当に面白いゲームでした。いろいろなオマージュをぶち込みながら、それでいて自分たちの物語を展開して、伏線も演出もちゃんとやる。ゲームとしても快楽を得られる。これだけの要素をよく同時展開できたなと思いました。wrong numberの難易度が理不尽な方向へつり上げられていたことだけ何とも言いがたいですが、こういうシステムにして「飽き」を回避したという点では拍手したいです。ストーリーの解釈や好みは人によるでしょうが、煙草を一服して写真をそっと手放した彼の気持ちを一端でも感じることができて、僕はとても満足しました。

プレイしたことを、いつまでも忘れたくないと感じさせるゲームでした。ありがとう Dennaton Games.