12garage

主にゲームと映画についての雑記。

WIREDは思い上がった心臓FLATLINEのWANKER野郎だ サイバーパンク2077にまとわりつく三流メディアの影

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Veritas numquam perit. - Lucius Annaeus Seneca

 12月27日。おれが新調したPCに向かい、Tychoくんに良からぬ思いを抱きながらぶつかって高速で吹っ飛ばされたり不便なチューブマガジンにやきもきしながらRキーを連打してマゾヒスティックな装填の喜びを噛み締めているとき、Chromeのおすすめに躍り出た記事に目を留めた。またか。またなんだな。おれは PerturbatorのElectric Dreamsを再生しながらベランダに出ると、ポケットから叶和圓を取り出し、安ライターで先を焦がしながら仮想チバ・シティへと煙混じりのため息をついた。



wired.jp


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 先におれが書こうとしているこの記事のネタバレをしてしまおう。このWIREDが公開しているいい加減な記事に、怒りを通り越して悲しくなった。たとえるなら記憶がないまま戦い続けてタワーを登りきったら実はこれまで殺してきたのはかつて戦地で背中を預けあった友の写し身だったことを知ったような悲しみだ。ふざけるなと思った。おれは虚無になり、宇宙猫になった。


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 しかしおれは正直、また記事を書くのをためらった。以上のように、おれの怒りはすでに一度まとめてあるし、どう怒っているのか・どうしてほしいのかといったことはもう言ったからだ。ここでまたしつこく書けば"おれの怒りPart 2"になる。Part 2は古くから数多くの映画が証明したように出来栄えを高めるのが難しい。おれがまた何か書いたところで処刑人Ⅱ(The Boondock Saints II: All Saints Day)のように途中でしんのおとこではないふざけたメキシコ人が出てきたり、ロッコがもはやハッパきめてんのかみたいな観念的で言ってることが意味わからなかったり、ウィレム・デフォーが女装してなかったりしてしまうのが関の山だろう。
 それに、前書いた記事がすでにじわじわと衆目にさらされ始めているらしいということがわかってきたので、ここでまた書くとなんだかちょっとバズったやつが気を良くして調子に乗り、ウケ狙いで同じこと何回もやるみたいなふうになるのが気にくわない。




 だからおれはさきほど書く予定のことを先んじて書いたし、これから長々書くつもりもない。カブりはつまらん。蛇足のPart 2を撮るべきではないとおれの頭の中のトガタも言っている。見出し一個に問題点を書き出して終わらせ、なにか楽しい話でもしようと思う。
 だりい話はもういいと思ってるロッカーボーイ目次からすっ飛ばしてあとの方だけ読んでもいい。というかさっさとそうしろ。

 



WIREDは返金対応を考えたほうがいい

 まずWIREDが妙にサイバーパンク2077に突っかかってんなというのはおれが前回の記事を書いていたあたりでも認識していた。その時点でおれはあまりに悪意のある取り上げ方にややキレていたが、せいぜいブラスコヴィッチがデスヘッドに抱いているのと同じくらいの憎悪だったのでまだ頭ドゥームスレイヤーには至らなかった。「ふーん……まあそんな書き方するならよほどしっかりした取材とかをやっているのだろう…三回くらいぶっとばしてやりてえけど……」と細目で眺める程度だった。

 フォローをするわけではないがWIREDはライターによってはいい記事を書く。たとえばおれがWatch dogs 2でなんとなくPRISM計画を風刺しているような気がしてスノーデンのことを調べていたら、WIREDが彼に接触してインタビューしたときの記事が出てきたりした。当時NSAが怒り狂ってバチクソ本気で追ってた元分析官に接触して記事を書くのはなかなかのものだ。それだけに今回のことは残念だなと思わざるを得ない。


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サイバーパンク2077は、その原作が理由で合わないのかもしれない。テーブルトークRPGサイバーパンク2077」のベースとなっている画期的な小説『ニューロマンサー』は、熱狂的で複雑な内容だと誰もが言う。しかし、1週間半が過ぎてもまだ購入していない。


 おれはまずこのへんでジンのボトルを取り出した。おれはあまり酒が呑めるクチではないが、まともに読むのがたいへん辛くなってきた。おそらくSFにさして詳しくない彼女は同僚とかネット上のレビューを中途半端に聞いて2.0.2.0.を勢いで2077にミスタイプしたりギブスン三部作が原作だと思いこんでしまったのだろう。しかし残念ながら彼女はライターであり、ただのマンションに住んでる気のいい奥さんとして容赦される立場ではない。"魂がこもっていない"(It Has No Heart)とタイトルでフカしながら原稿料をもらっていてこの履き違えをしたのはあまりにも痛く、この時点でこの記事も批評される側に回ってしまったわけである。
 それに、ここでサイバーパンクに関して全くの門外漢(門外ウーマンと言ったほうがいいだろうか?)であることを吐露してしまったのもその後のゲーム評に影を落としてしまっている。せめてこのあたりで私向きではなかった(Not for me)と批評を切り上げるか、いっぺんサイバーパンクについて調べたり歩み寄ろうとすればまた違ったのだろうが、ライター氏はあまり自分自身のことを知っておらず取材熱心な記者でもなかったようである。


ほかに何をすべきかわからないので、ひたすらクエストトラッカーを追うが、どれも実行する理由がわからない。ウィッチャー3のように、行方不明の子どもや狼男の愛を求めて争う2人の姉妹など、すぐに心の琴線に触れるサイドクエストとは異なる。

サイバーパンク2077ではレイスの隠れ家を偶然発見し、それから男を撃った。しかし、なぜわたしは撃ったのか? レイスとは何者なのか? 集めるべき証拠は何なのか? わからないし、どうでもいい。

 悲鳴を上げたくなった。勘弁してくれ。どうしてそうなるんだ。
 百歩譲ってサイバーパンクもSFも興味がないのをよしとして、たとえばトラウマに苦しむ退役軍人や、自身もアウトローでありながら持たざるものから搾取する悪党どもを許せないフィクサーらの義侠心などがサイドクエストでいくらでも感じ取ることが出来る。「わからないし、どうでもいい」という態度でぐだぐだやっているのに、なぜ開発者側に対してあんなに強気に出られるのかがわからない。前にも言ったが、娯楽にすらそういう斜に構えた態度で接するやつはどうしようもない。


昨夜、わたしは巨大で非常に詳細に描写されたジャンクヤードの中を、20分かけてよじ登り続けた。そしてなし遂げたのは、道を見つけ、誰かを撃ち、バカげたグレムリンのようなクルマを奪うだけである。(中略)

トランスジェンダー嫌悪と人種差別の批判にもかかわらず、わたしはプレイした。キャラクターがひどいヒスパニック系のアクセントで「クソアマッ!」と金切り声を上げるたびに青ざめながらプレイした。それは明らかに、おかしいくらい控えめに「ふむ」や「クソッ」とつぶやくゲラルトのように、ミームになるような場面を卑怯につくり出そうとしている。(中略)

しかし、企業が全権を掌握し、あまりに広範囲に身体改造を施す時代に、苦しみもがきながら意識の意味や年齢を重ねる意味、人間であることの意味を求める主人公もいない。魂のこもっていない「サイバーパンク2077」は、ロックバンド「Lit」のヴォーカルのコスプレをしたキアヌ・リーヴスが頭の中でいらいらさせるだけの、何時間もの骨折り作業にすぎないのだ。

 総括するとこのひとはとびきりおハイソなウィッチャーがやりたいのだろう。なおかつ、スラムやストリートで育った教育すら受けるチャンスのなかったキャラクターでも"お上品な"言葉遣いをしていたほうがいいらしい。
 さらに言えば「人間であることの意味」はまさに彼女がその一文の中でこき下ろしているジョニー・シルヴァーハンドが追い求めていたものそのものであり、そんなことは繰り返し繰り返しArasakaに立ち向かうロッカーボーイの言葉と過去とSAMURAIのリリックで見せられるのだが、たぶんChippin' inが流れているときに奇跡的に毎回耳栓(イヤープラグ)がインしていたのかも知れない。耳をふさいでいるから自分の知りたい世界――お上品でクリーンな、政治的に正しくLGBTQに配慮、非暴力―にフィルタリングされ、いつまでも同じところで足踏みし、銀の腕のパンク野郎がシャウトしていたことは何も伝わらない。



 無論ジョニーはガキっぽく、浅慮で、その場のことくらいしか考えていない面もある。だからプレイヤーは悩むのだ。自分が何を選択すべきか。本当にジョニーを信用するべきなのか。そこに己の選択という深みが生まれてくる。


 ウィッチャーウィッチャーとお門違いの空想を追い求め、サイバーパンクの世界にも最初から自分で壁を作って目をそらしているのに、「このゲームはわかりやすく胸を打ってきたりしない、魂がない」などとうそぶく。お笑いだぜ。はっきり言ってこんな杜撰なライターを雇っているWIREDや、こんな記事を翻訳してSEO上位で拡散し恥知らずにもメディアを気取っているWIRED.jpは神経を疑う。記事に“魂がこもっていない”からだ。まずはサブスクリプションの購読者に返金対応することから考えたほうがいいだろう。
 確かにどんな人でも引き込むユーザーフレンドリーなゲームを作ってもらいたいのはわかる。しかし自分から物語を読む手立てを閉ざしておきながら、開発者側に過剰なわかりやすさを求め続ける手合いは見るに堪えない。それでいて、ゲーム側が主導して強制的にストーリーを進めればムービーばかりだとか自分にできることがないとブーブー文句を言う。ただでさえ消費者側がどんどんどんどん自分の娯楽にすら怠惰で愚かで傲慢になっていくのに、頭がちっとばかし回っていなきゃいけない記者がこんないい加減なことをやってハーメルンの笛吹きよろしく消費者を煽っているのだから悲劇だ。暗い暗いと文句を垂れる前にテメーが掛けてるサングラスを取れ。


 ちなみに"魂がこもった"というセンテンスについて、AUTOMATON(自動人形)のほうがよほど魂のこもったレビューをしているのは言い得て妙だなと思った。ネタバレ記事なので後で読んだほうがいいが、WIREDとは比較するのも失礼なほどしっかりゲームの構造を分析して良い点悪い点を書いている。

automaton-media.com



もうなんかどうでもいいからサイバーパンクを食え

 おれは最初にも言ったがただキレ散らかすだけの同じ記事を二回書く気はない。そんなもんはチンコだ。チンコがチンコと被っているので書かない。


 ここからは少しマシな話をしよう。ゲームの話だ。
 たぶん今頃サイバーパンク2077のコンシューマ版を持っていて、アップデートを待ちながら年末の予定を考えているロッカーボーイもいることだろう。そこでちょうどSteamやPS Storeがウィンターセールをやってるので、おれが面白いと思ったゲームのリンクをいくつか貼っておく。
 ただべつにおれがここで紹介したからって「やってないやつはニワカ」とかそういうクソだりい話にはならない。近所のにーちゃんがスーファミのカセット抱えてきて「これやるわ」とドサッと置いてったみたいな感じで適当に眺めていればそれでいい。やりたきゃ勝手に端子をフーフーしてやれ。



RUINER



 こいつはマジに狂っちまいそうなほどブッ飛んだサイバーパンクアクションだ。センスが尖りすぎてて三年も前のゲームだとはとても思えねえ。確かにゲームシステムはちと古いクォータービューのツインスティックシューティングだが、何しろ作ってる連中が開発歴の長い変態ゲームオタクかつ無類のSF好きという非の打ち所のないボンクラだから心配はいらない。

 詳しくは昔一回記事を書いているのでそこでも読んでもらえばいいが、このゲームはUIからストーリーから読み物から使用楽曲からプレイ感覚まですべてがサイバーパンクしている。まるで頑固なラーメン屋のくそオヤジが我流で混ぜて煮詰めまくった意味のわからねえガラスープの如き渾然一体としたサイバーパンク汁に、ガッチガチのバカ硬い粉落としのハードコアアクションを叩き込んだような一杯だ。

 アクションの難易度がやや手強いが、そこだけわかってれば間違いなく旨い。食え。



VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action



 もうなんかこれについてはおれが言うこともねえくらい売れてる作品だ。多分すでにやってるやつも多いだろう。

 ベネズエラの開発チームが自分たちの国の社会問題を取り入れながら日本のサブカル文化をリスペクトして作ったサイバーパンクアドベンチャーゲームで、この作品の持つ雰囲気はなんというか90年代からゼロ年代の、98のトロさにイラついたりMeのフリーズに怯えつつモデムをガリガリ鳴らしながらFlash見てたネットのアングラな空気を思い出す。梅本サウンドっぽいBGM聞いてたりla/u/ncher眺めてると特にな
 サイバーパンクと銘打ちながらも登場人物の抱えている悩みは普遍的でプレイしている現代のおれたち側にも静かに語りかけてくるものがある。酒を出す側のプレイイングにも関わらず、まるで自分もその場にいて自分の悩みをそっとリキュールに溶かしているような感覚を覚える。ああ、こういう悩みを抱えているやつもいるし、みんなそれぞれ変わった経歴を持っていたりしていて、おれの苦しみもそんなにおかしいものではないのかもしれない…というような……静かな癒しがある。

 基本的に酒を出すだけというゲームだが、あえてオーダー通りに作らないことで普通は聞けないセリフを引き出せるなど、作り込みの異常さは眼を見張るものがある。マルチエンディングなのでやり込みがいもあるだろう。まあ、一杯飲め。



Hacknet



 こいつはサイバーパンクというよりサイバーって感じがするがいちおうリコメンドしておく。

 おまえはある日、Bitという天才ハッカーから一通のメールを受け取る。どうやらクソヤバい状況になって生きているか死んでいるかもわからないので、後のことをお前に託したいという。おまえはBitの遺したチュートリアルを頼りに、危険なネットの世界を探索し始める…というゲームだ。
 このゲームは実際にLinuxコマンドを打ち込んで実行しながら、ゲーム内のNPCのサーバーに侵入したりして話を読み進めていくことになるハッキングゲームだ(一応言っておくが現実世界のクラッキングをやるわけではないので安心しろ)。クラッカーというより「パソコンに詳しい人」という意味で正しくハッカーっぽいゲーム体験をすることが出来る。


 これがサイバーパンクと何の関係があるのかというと、T-バグたちネットランナーがどういう商売をやってるかがこのゲームをやるとよくわかる。ジャッキーやおれたちVみたいな脳筋ローム中毒のソロどもにはチンプンカンプンだったが、まったく4時間であんなクソデカい紺碧のセキュリティをモノにしたのは大したものだ。そりゃデーモン最高とでも言いたくなるだろう。

 余談だが、GOGのゲームでもあるのでGOGから買ってCD projektを支えてやってくれるとおれは嬉しい。
https://www.gog.com/game/hacknet



好きなことやって最高の2.0.2.1.を迎えろ


 おれは好きなものに関してくだらんやつがのさばるクッソだりぃ環境になってきたのでこうやって何回もブチ切れたが、べつにこれを読んでいるおまえたちにも同じようにキレろと強制しているわけじゃない。おれの怒りはおれのものでべつにおまえらに押し付ける気はない。ただおれの言ってることに重ねて考えや気持ちを整理するとか、あるいはおまえ自身の考えでおれと違う発想に至るとか、そういうのは好きにしたらいい。勝手にしろ。

 だがどんなやつにもこれだけは言っておく。2.0.2.0.が終わっちまうぞ。今年だけじゃない。おまえの人生もそこの日めくりカレンダーみてえにあっというまに減っていく。なんでもかんでも腐してつまんねえこと言ってたらつまんねえまま野垂れ死んじまうぞ。アツくなって楽しみまくれ。映画でもゲームでも読書でもいいし、年末ギリギリまで仕事を頑張るコーポ野郎ならスキマ時間でソシャゲに打ち込むのだって悪くねえ。娯楽に貴賤はない。それでいい。それでいいんだ。おまえの喜びをゲロみたいに吐き出しまくってサイコーの記憶を積み重ねろ。思い出は色褪せない(Memories "never fade away")。