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主にゲームと映画についての雑記。

最近見た映画の感想2019.1.4「レディ・プレイヤー1」

 Say Ho.

 昨日に続き映画の感想です。「レディ・プレイヤー1」について書いていきます。
 例によってネタバレ等に配慮はしておりませんので、未見の方は自己責任でお願いします。

 実はバーフバリの感想も書こうと思ったんですが、レディプレについて書いてるうちにめちゃくちゃ長くなってきたので後日に回そうと思います。
 今回はガッツリレディプレについて語りまくりたい……!いずれ書きます。サフォーレ・バーフバリ……!




もくじ


バーチャルの世界



 いやーーーーなんつーかね。インターセプターと金田のバイクが走ってるのを見たら、たぶん意味のある言葉はなんも言えなくなりますね。僕しばらくウホッホ!ウホンホホホ!!みたいになってましたよ。


 実は、この映画を見たのにはちょっと動機があったりして、まずその話からしたいと思います。
 この映画、俗に"Vの者"と呼ばれている人たちから非常に人気でして、僕もそれで見よう見ようと思って今回見た*1という経緯があります。
 Vの者とは、今人気のバーチャルユーチューバー(Vtuber)ですとか、実際にOculus riftやHTC Viveといったゴーグルを着け、VR chatというソフトなどで実際に活動している人たちなど、主にバーチャル界隈でいろいろしているひとのことを指す俗称です。すごいですよね?もうこういう方々が世の中にはいらっしゃるんですよ。レディプレって実は未来の出来事じゃないんです。劇中のオアシスほどじゃないですけど、既にある程度のものが完成してて実際に遊んでる人がいっぱいいます。
 たとえば、細かすぎるモノマネ大会を企画してやったりしてる様子をYoutubeに投稿しておられる方などもいらっしゃるんですよ。


youtu.be (すこし解説を入れますと、声でわかるかもしれませんがこの動画で出てくるキャラクターは男女さまざまな方が「中身」として操作してます。男性でも女性でも動物でも演じられるんです。しかもそのキャラクターのCGを「自分で作り上げて」参加している人もかなりいますし、さらに言えば足場が開いて下に落ちる舞台といったこの「世界自体」も、個人が作ったものです。レディプレでエイチが「ガレージで乗り物を作って売ったりしてる」という話をしてましたが、もう実際にそういうふうに自分で作ったキャラクターや乗り物を売ってる人がいるということですね)

 そういったバーチャル・リアリティの最先端を走る人達が「まさにこの映画でやってる内容こそがVRの楽しさなんだよね!」と熱弁されているので、レディプレを観たというわけです。映画を観てVRを知るというよりは、現場でVRをやっている人のお話とかレビューを聞いて観たという順番ですね。

 で、なぜ僕がそんな話をしたかと言うと、たぶん「僕の評価軸がそこ基準になってるっぽい」ということを言っておいたほうが良いかな……と思ったからです。べつにカッコつけようとか奇をてらおうというワケじゃないんですが、あんまりこう、「世間一般的にわかっていただける感想ではないかもしれない」……と思ったからですね。もしかしたら不快に思われる方もいるかもしれないので、そこのところをちょっとご了承いただきたい。


贅沢すぎる"キャスト"を超贅沢に使った画作り



 さて、やっと前置きが終わったぞ。なげーな。さっさと映画の話に入っていきましょう。
 まあまずはやっぱり、知ってるキャラクターがどんどん出てきてそのへんでウロウロしてるっていう光景は興奮しますよね。ストリートファイターシリーズの春麗が回し蹴りしてたりする横で、Haloのスパルタンたちがファイアチーム組んでたりとか、キャラクターがGoWのランサーを撃ったりする様子を見るととにかく興奮しますよ。特にアイアン・ジャイアントが親指を立てて溶岩の中へ沈んでいくシーンは涙無しには見られなかった
 で、しかもそのキャラクターたちがさほど「特別扱いされない」っていうのがすごくないですか?知ってるキャラクターがバンバン出てきて、そのほとんどが画面にチョロっと写すだけで終わるっていう。いや~~~~~~、超贅沢っすよ。ヤバイっすよね。ガレージに普通にソードフィッシュⅡとか置いちゃうもん。でもこの世界の中の人達にはそれが普通なんですよね。この世界ではもうよくあることなので、有名なキャラとかがいても「あ、バッツじゃん。イカしてるね!」で終わり。むしろ劇中でもパーシヴァルの服選びシーンであったように、マイナーでわかる人が少ないほど「アンタ、それを選ぶとは……わかってるねぇ!!」みたいに話が盛り上がるのが非常に"濃い"ですわ。
 たぶんオアシスのなかの価値観では、誰でも知ってる何かを真似するのもいいけど、マニアックな趣味でお互いに「それを知ってるとは……お前さん、やるねぇ!!」「そういうコンセプトでアバターを作ったのか!いい仕事……してますねぇ!」するのが楽しかったりするんじゃないでしょうか。僕的にはとても居心地が良さそうで憧れます。あんまりそういうの興味ない人は、リアル系のアバターでリゾートエリア行ってバカンスしてたっていいわけですから誰にとっても住みやすそうです。
 オレもガンダムで行きたい!

超COOLなハリデーの思想



 それから、レディプレで特に面白いのは「ハリデーの思想」じゃないでしょうか。
 い~~~や~~~~~僕は本当にこのハリデーの一言一言が好きでしてね。何が良いかっていうと、たとえば最初の試練でパーシヴァルがレースのヒントを探るシーンがあったでしょう?あれが特に良い。
 あのシーンはモローがハリデーに「オアシスはもはやゲームじゃなくてインフラになった」「だから風紀を守るためにオアシスにもっと決まりごとを作るべきだ」というようなことを言うシーンなんですが、そこでハリデーは突っぱねるわけですよ。「決まりごとでガチガチに縛るためにオアシス作ったわけじゃないだろ!」「そんなつまんねー世界にしていくくらいだったら、楽しかった過去に向かってバックしたほうがいい!」と。

 も~~~~~~~、超ロックしてますよね。アングラに生きる人間の気持ちをよくわかってる。そうなんですよ。まさにそう。アングラ文化を好んだりインターネットに住まうひねくれ者たちは、好きなものや行きつけの場所がメジャーになったり決まり事だらけになることを怖がるんですが、その理由こそがまさにハリデーが言っているこのことなんです。


 たとえば、心が疲れたときに通う行きつけの静かなカフェとか、ゆっくりできて気に入っている店があったとしましょう。隠れ家的な、ああいう感じのね。そこが雑誌とかテレビに映っちゃうと……「なんかなあ……」って思いません?次の日おそるおそる行ってみたら、案の定アホ学生のサークルが「ウェ~~~~イ!!!」とか叫びながらジュースぶっこぼして爆笑してたら……いなくなったあとに店員さんが嫌な顔を押し殺して、黙々と床を拭いてたら……。いや、最悪ですよね。ここにいるだけでつらい……ってなる。その感じなんすよ。
 "コンテンツの一生"なんていうふうに揶揄されたりしてますけど、最初に面白い人達が見つけてバリバリ開拓してたフロンティアに、だんだん人が集まってワイワイしてたら、急によくわからんおかしな奴がやってきたと思ったら軽トラひっくり返すみたいな大騒ぎしだして、それを見かねてガチガチのルールを決めざるを得ず、問題を起こさず楽しくやってた人たちまでもが巻き込まれて「もういいや…」ってなっちゃう。
 これをハリデーは理解してて、だからこそあのシーンで決めごとを作ろうとしたモローに「オアシスがつまんなくなるからそれはやるな」「やるくらいならいっそバックしろ。後ろ向きに進め」と釘を差したわけですね。

 そういうハリデーの性格をわかっていると、インターンのソレントが「階級制を作ろう」と言い出したときになぜガン無視してコーヒーの話で一蹴したかもわかりますよね。そういうのは儲かるかもしれないけど、自由じゃない。差別にも繋がりかねないし、楽しくない。ロックしてねえし、ぜんぜんクールじゃない。そんなもんは F U C K だ!!という姿勢がハリデーの中に貫かれている。これ、超カッコいいっすよ。惚れますって。僕だったらこのシーン見るために毎日ハリデーの資料館に通いますね。


エンディングについて



 ハリデーが好きすぎるという話をコレ以上すると自分でも引きそうなのでこのへんにします。
 そして……まあちょっと人によるかなと思う話題に入りますが………なんというか僕はこう、エンディングに納得がいかないんです。
 どうして……どうして……(電話猫)

 いくつか納得がいかないところはありますが、やはり最後のハリデーのセリフとウェイドの態度がどうしても受け入れられない。
 人嫌いのハリデーがオアシスのために生き、死の間際になって後悔し、現実でもっといろいろなことをやりたかったと考えたのは納得できます。死を前にして、好きな人にも告白できなかった人生だ、自分は孤独だ……と思うことはとても恐ろしいことでしょう。だからイースターエッグでみんなが同じ話題で盛り上がるように考えた部分もあったのかもしれないですし、自分の考えに最も近づいたウェイドに先輩として忠告したかったのかもしれませんね。でも、「現実しかリアルじゃない、うまいメシは現実でしか食べられない」っていうのは……。うーん。
 いままで「オアシスはなりたい自分になれる!顔の美醜や傷や人種や性別だって関係ない」「エイチやダイトウやショウのように、顔や姿を知らなくてもネットで本当の友情が生まれることだってある」っていう話をしてきたわけじゃないですか。その集大成が、終盤でパーシヴァルのもとに駆けつけたオアシスの沢山のプレイヤーとの絆だったはずです。ここで急に現実はいいよ、現実は大事だからねなんて言われても……。それはちょっと、いくらなんでも矛盾しすぎているような気がしてすっきりしないんです。


 これは、なんていうか流石に腑に落ちないんですよね。そもそもなんで皆がオアシスに来るかっていうと、オアシスが楽しいからというのもありますが、現実世界が相当ヤバイ状態だからです(冒頭で説明がありましたね)。エネルギーが枯渇し、IOIのような大企業が好き勝手ドローン飛ばしてのさばってる中で、貧しい人がスタックというボロボロの違法建築住宅に住み、移住できないから女性やその甥っ子を殴りつける暴力男がいても追い出せない。IOIは最後に弱体化しましたが、ハリデー存命時点で現実世界がかなり厳しい状態だったことには変わりないはず。
 どうだろう……?僕はちょっと、この現実世界で食べるゴハンは美味しくなさそうだと思いますね。まあそれだったらっていうのもなんですけど、自分としては適当にサンドウィッチでも口の中に突っ込んで一秒でも長くオアシスのなかに居たいですね。

 だからこう、レディプレに「現実って大事だよね!」と言われても、ちょっと同意できないっていうか。
 決して「現実が楽しい!」と思ってキラキラした人生を過ごしたり、夢のために生きようとしている方を悪く言いたいわけじゃないんです。ただこう、嫌味とかじゃなくて単純に、薬を飲んで一定カロリーの食事メニューを食べてウサギみたいにレタスとキャベツばっか食べる生活を一年くらいしてた自分からすると、「だって現実世界に美味しいご飯があるじゃない!」とか言われても、あ~…住む世界が違うなぁ~…とぼんやり思うしかないんですよね。辛いこと含めて現実を楽しむことも大事って言われましても、辛いことに耐えきれず死を考えるほどの人もいますし、世の中現実が楽しいってひとばっかじゃないわけですよ。えぇ~、レディプレ、そういう結論になっちゃったのか…と思ってしまう部分がありますね。

 っていうかそもそも、「あれ?オアシスって現実でしょ?」って思っちゃうんですよ。いや、もちろんフィクションと現実の区別がつかないってことじゃなくてですね。現実と区別した上で、ん?オアシスって現実の延長線上にあるんじゃないか?ただの新しい開拓地なんじゃないか?って。オアシスの中で自己実現するのは、別にありえない世界で現実逃避してるってわけでもないと思うんです。言ってしまえばオアシスにいる人達も結局は人間なんですから、とうぜんオアシスの中にだって嫌なヤツがいたり人間関係や苦しみはあるわけですし、別にそんなに「オアシスの中にいるから楽をしすぎる、人間性が麻痺する!!」って程ではないんじゃないでしょうか。
 たとえばちょっと現実での例を引き合いに出しますと、インドでは結構前からIT産業が興隆しているのですが、そのウラには「IT業界はカースト制度の定めにない」というのが理由のひとつとしてある*2んです。インドでは身分制度であるカーストが名目上廃止されてるんですが、いまだに「このカーストの者はこの仕事につくべきである。守らないものは戒律破りだ!不届き者!」みたいな観念はガッツリ残ってるんですよ。なので、いくら形の上では自由でも、カーストに決められた以外の職業に就こうとすると難色を示されるわけです。ところが、IT業界はカーストにはないもんですから、ここを目指せば少なくともカーストではなく「自分」を見てもらえる!と人材が殺到したんです。ここはまさしくフロンティアなんだ、自由なんだ、というふうに。そしてマイクロソフトCEOにインド人のピチャイ氏が就任したりするほどになった、という現在に至るわけです。
 僕としては、これもある意味ヴァーチャルの世界も同じなんじゃないかな?って思うんですよね。現実世界で自分をがんじがらめにしてくることから、解き放たれる世界がある。そこで頑張ることって果たして"逃げ"なのかな?と。モニターを介することでどうしても「電子世界」≒「ゲーム」≒「遊び」≒「現実逃避」みたいな結論にされてしまうことがありますけど、我々を縛ってくるルッキズムジェンダーといったしがらみから遠いバーチャル世界で頑張ることって、インドでカーストと戦いながらIT業界を目指す人たちと変わんないんじゃないかと思うんです。



 あと……ちょっと嫌なことを言ってしまうと、ウェイドが「オアシスの火曜と木曜はお休みです!」と高橋名人みたいなことを言い出したのも、現実世界で住むところも名声も彼女も手に入れて、すっかりリッチマンに染まってしまったからなんじゃないかと思ってしまう部分がありますし……。仮に給料が25セントでも絶大な権力を持っていて、試練クリア時の報酬コインもあるから生活には困らないし。そんな状態でハリデーの意志を汲んだとはいえそれをオアシスに向けて振るっちゃったわけですから、「えっ、どうしてそんなことしちゃうんだパーシヴァル!?演説でオアシスのみんなを団結させたアツいお前はどこへ行っちまったんだ!?!?!?」と戸惑ってしまうんですよね。
 皆から多少反発があったと彼自身も言ってますが、そんな決まりを勝手に作るのはロックじゃないし、クールじゃないでしょう……そのために、どうしてもあのエンディングがどうも「二人目のソレント誕生!」というように見えてしまう。いや、僕の性格が悪いからそう見えるんだとは思いますが…。




まとめ


 レディ・プレイヤー1、とてもいい作品だったと思います。好きですよ。うん。流石にちょっとくらい気に入らないシーンが有ったからって、全部悪いなんて無粋なこたぁ~申しません!一生懸命各方面と交渉してたくさんのキャラクターを出したのは素晴らしいと思います。それにそもそもレディプレ自体が2014年原作の小説ですから、そりゃあ事情が今といろいろと違いますからねぇ。それを考えると、今の視点から見て原作やスピルバーグ監督にいろいろ言うってのも変ですしね。


 ただ、まあ批判とかじゃなく単純にですね。レディプレの描く世界とは、僕の知っていたり考えている世界とは少し乖離があるような気がする…という部分はあります。僕が生きてきたオタク人生の中で、ハリデーと同じようにポップカルチャーとディープな世界にのめり込んで、ネットに触れて、オンラインゲームを遊んで、バーチャルの世界を感じて……と構築されてきた自分の中の「バーチャル・リアリティ」とは違う路線を走っていったのかなという感じです。
 だから、あの結末に対して僕としては「そんなに仮想世界って、現実を侵略したりしないよ」というふうに意見を持ちました。現実とバーチャルの割合をどれくらいにするかっていうのは人それぞれだと思いますし、新しい世界を用心深く見ることもそれはそれで正しいことだと思います。でも、そんなに…そんなに恐ろしいものじゃないよw……と、ちょっと苦笑いしちゃった感じですかね。




 まあその、とどのつまり僕が勝手に公式と解釈違いを起こしたという一言で結論付けられるわけですね…
 …ウッ…こう表現すると自分のしょーもなさっぷりがツラい……ゥォォン…
 

 そんなわけで、レディプレ自体はいい映画だと思いますので、ぜひ皆さんも鑑賞して「バーチャル」の世界と夢を感じてほしいなと思います!
 いろんなキャラ出るしね!!

 ◆いじょうです◆

*1:VRわかるマンにむけて具体的に言うとウカ様の影響

*2:もちろん、インドの人口から来る絶大なマンパワーや、アメリカの夜間の仕事を代行で請け負える地理的要因もある