12garage

主にゲームと映画についての雑記。

最近買ったオーディオのレビューEXTRA CCC (CL750,PH-01J,HE400se)

 つい先日ハイファイマンのHE400seを入手したので、今日は買ってあるのにだいぶ放っておいたオーディオの記事を書いていきます。よろしゅう。



RHA CL750


 RHAは以前MA750を紹介しましたが、イギリスのイヤホンブランドです。全体的にロックに合うキレの良いものが多いメーカーで、イヤーピースの出来も良いです。
 そのRHAの、わざわざアンプを使えと書いてある変態イヤホンがこちらのCL750です。

 ヘッドホンやイヤホンには能率という概念があります。よく「鳴らしやすさ」とも言われます。基本的には説明に書かれているΩ(オーム)が低ければ鳴らしやすく能率がよく、パワーがない機器でも鳴らせる、つまり使いやすいということになります。だいたいのイヤホンは16Ωくらいだと言われており、ヘッドホンなんかはもう少し高いです。この抵抗が高いと、非力な機械に接続したとき音がやせ細ってしまい、がんばって音量を上げても音がスカスカになるという欠点があります。しっかりと聴くためにはヘッドホンアンプで増幅してやる必要が出てきます…。
 それを踏まえると、ではなぜCL750はわざわざ150Ωというアホの子みたいな抵抗値にしてあるのか?もしかしてRHAのエンジニアは紅茶が切れた状態で設計してしまったのではないか?という疑念が浮かんでくるでしょう。

 インピーダンスが高いということはつまり、鳴らしたい音が鳴りにくいということでもありますが、意図せず交じる微量のノイズなどもまた抵抗のおかげでシャットアウトしてくれるということになります。CL750もそうで、ここが高抵抗(ハイインピーダンス)の非常に良いところです。
 単純に音にキレがあり聴いていて気持ちがいいという音作りの面も良いですが、やはり曲の中で無音の瞬間にきっちりノイズをカットして無音になってくれるのでメリハリが生まれ、とてもクリアな見通しで聞けますね。

 アンプを用意するという一手間が必要ですが、本体自体はエントリー価格で、そのわりにいい音を鳴らす良いイヤホンだと思います。

 

ポータブルアンプ PH-01J


 というわけでその変態のイヤホンを鳴らすために買っていたのがこのアンプです。正確にはこれの第2ロットでオペアンプをナショセミに載せ替えてあるものを買いました。
 使い方としては「もともとの再生機器からステレオミニジャックでコイツにつなぎ、コイツで増幅して音を出す」…といった具合。こうすることでヘッドホンなどを十分な信号で駆動できるというわけです。

 廉価なアンプではあるのですが、実はいまどきこういう「自前のバッテリーを使いライン入力で増幅してくれる」という単純なポータブルアンプがめちゃめちゃ少なくなっています。僕が以前買ったHidizsのS9もそうですが、だいたいDACを内蔵してバスパワー駆動するドングル型の製品が主流になってきている印象です。
 そのほうが音作りもやってくれてかんたんに高音質化できるので効率はいいんですが、やはり僕が気になるのはバスパワーで接続先の機器のバッテリーをやたら食うというところです。これは困る。とくに僕は小型のAP80PROを使っているので、そういうものを使ってしまうと息切れも早い。
 その点、PH-01Jはあくまで高い製品ではなくそれなりですが、ただ単純にゲインを稼いでバッテリーを食いすぎず駆動してくれればいいんだよ!という自分のような人には丁度いい使い勝手だと思いますね。

 ちなみにコイツは中のオペアンプを取り替える事ができるので、最近MUSES8920に換装しました。


やっていきます

一個替えてみたところ。ちなみに分解した時点で保証が切れる

無事通電。やったー!


 僕はべつにオーディオファイルというわけではないのであんまり自信を持って細かい違いを挙げられないのですが、ホワイトノイズがかなり減ったというのは確実な変化でした。
 真空管を替えて楽しむことを玉転がしオペアンプを替えることをそれになぞらえて石転がしと俗に言うらしいですが、こうしてノイズが減るのを実感するとそれをやるのも頷けるといったところです。
 PH-01Jは通常版に据え付けられているオペアンプがかなり前の世代の安いもので誰にでもは勧めませんが、オペアンプの換装である程度どうにでもできるのは助かりますね。はんだ付けとかもいらないし2回路のオペアンプならチャチャッと足をまっすぐにして差すだけでだいたいイケますので、「ポタアンは買ってみたいけど高いのは嫌だしバスパワーはバッテリーが…」といった僕みたいなひねくれた悩みを持っている人は試してみてもいいんじゃないでしょうか。


HIFIMAN HE400se

 平面駆動型という方式の変わったヘッドホンです。

 よくあるごくふつうのヘッドホンやイヤホンにはダイナミック型といって、円錐のようなホーン型のドライバーが入っており、そのホーンに取り付けられた磁石とコイルで揺らして音の振動を出しています。
 平面磁界型というのはそのホーン部分をまっ平らな板にし全体に磁石をくっつけ、それを電線で挟んで揺らす方式です。あんまり構造について説明できる自信はないので詳しくはHifimanのサイトに譲ります。

 平面磁界型というのは音響的には優れているらしいのですが、抵抗値がやたら高くて(そりゃ一箇所だけ磁石を動かすのと全面動かすのじゃ違うわな)めちゃくちゃ駆動が大変で、製造にも手間もかかるので5万クラスはザラの高級品ばかりなのですが、そのなかではHE400seはすんごい安い。


開封の儀


 ここのところeイヤホンのランキングでも有線ヘッドホン部門で14位くらいとまあまあ高めな順位を獲っているらしいですが、なるほど頷けるものがあります。

 いやまあ、はっきり言ってこのヘッドホン、「音質以外のすべてを置き去りにして音だけにコストを注ぎ込んだぜ!!!」というような気配はするんですがね。アンプがないとほっそい音しかしないし、本体ハウジングはなんかFRPっぽく、引き出し式のスライダーはうまく調整できないし、装着すると重い……しかし、それを踏まえて良しとできる音質がある。

 一言であらわすとスピーカーに近いです。僕は中華アンプなどでちょっとしたコンポーネントステレオを組んでいるのですが、それで音楽を聴いているときくらい音場の広がりがあり、鳴っている音の空間表現は相当のものがある。さらに音の立ち上がりがリニアでパッと鳴るのでモタついた感じがないのも素晴らしい。これが平面駆動なんだな、と恐れ入りました。開放型ゆえ音漏れもそこそこするという短所はありますが、そこも含めてスピーカーに近いフィーリングです。
 解像感はもはや言うまでもなく、この価格帯でここまでできるのは驚きですね。これよりちょっと高いゼンハイザーのHD599も愛用してますが、音の全体的なレベルに絞って言えば互角と言ってもいいでしょう。

 アンプが必要だったり本体が重かったりといった欠点はありますが、この価格でまあよくこんなはっきりとして広い空間表現を実現できたなというハイコストパフォーマンスな一品だと思いますね。アンプを持っているか出力の大きいDAPがないと真価を引き出せない、という前提条件ゆえ若干の物好き向け感は否めないですが、安くてすごいヘッドホンなのは間違いないでしょう。



<了>