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主にゲームと映画についての雑記。

【BIOMUTANT】バイオミュータントのインプレ ~ バナナに刃をつけてカタナにするゲーム

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 買いました。バイオミュータント。

 電撃とかのゲーム情報サイトなんかが最近プレスを出していたので気になりつつも、Steamの評価が微妙だったので迷ってました。ただ周りで結構気になる人とかもいたりして「じゃあ人柱になってみっか。やらないで色々言うよりはやって感想を伝えたほうがいい気がする」と思い立ち、PS4版をやってます。

 ということで今回はインプレというか序盤で感じたことのレビューを書いていきます。
 ただあくまで序盤の感想であることと今後のアップデートで内容が変わることはご留意ください。



オーバービュー

 まず非常にグラフィックやデザインが綺麗、凝ってると思います。ゲーム本体のサイズ自体はそこまで大きくないにもかかわらず、美しい画作りがなされており、メインクエストでうろつく道をたどるだけで一枚絵になる場面と多く遭遇します。
 アクション部分については若干挙動の軽さや荒削り感が否めず、煮詰め不足のインディーズゲーのように感じる部分は無きにしもあらずといったところですが、「デビルメイクライシリーズを参考にした」と語るとおり銃と近接武器をうまく使い分けて戦えるのは良い設計だと思います。
 また、後で触れますがハクスラ要素を含んだクラフトシステムがなかなかやり込みがいがあり、武器をパーツ単位で自分好みにカスタマイズしていくのは、こういうのが好きな人にはたまらんなといったところです。

 ただ、ナレーションの多さやストーリーテリングの拙さは人によっては非常に不快なものであり、ゲームクリアまでそれが終始つきまとうため、如何ともし難い部分もまた存在するゲームではあります。

 以下、長所と短所について詳しく書いていきます。


pros

グラフィックが良い

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 キャラの毛皮から遠景までとても美しいです。
 さっきから貼り付けているスクショはPS4で撮ったものですが、いい加減世代交代にさしかかったおじいちゃんゲーム機であるプレステですらこれだけ綺麗に表現できているのは上等といったところでしょう。
 自然とその汚染、ミュータントをテーマにするだけあり木々や草花も多く登場しますし、廃棄された工場やスクラップヤードなどは確かにフォールアウトファンやニーアファンのような廃墟好きから見ても唸るところがありますね。


装備品のデザインが良く、身につけるとちゃんとその装備固有の見た目になる

 さっきのスクショでもわかると思いますが、防具が豊富で装備するとちゃんと外見に反映されます。これはいい。
 胴と足だけでなく帽子や両肩、背中にバックパックの装備枠があり、さらにその装備した防具に鉄片やワイヤーメッシュなどのアクセサリを取り付けることで防御力を向上させることができるので、極めて多彩な服飾が楽しめるようになっていて楽しいです。
 もちろん防具である以上、性能重視で選ぶと婦人帽をかぶって革の肩パッドをつけ甚平を羽織りショートパンツを履いた世紀末覇者のごときめちゃくちゃなスタイルになりますが、そもそも世界が終わっていて拾い集めた服を着ている以上、ポストアポカリプスものの雰囲気が出てこれはこれで面白いです。


それぞれステ値をもった部品を組み合わせて武器を作れる

 武器にもクラフトやカスタマイズシステムがあります。グリップや刃といったパーツで構成するようになっており、近接も射撃もそれぞれパーツを組み合わせて好き勝手に武器を作れるのでこれも本当に面白い。


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 こんな感じです。
 基礎パーツによってだいたいの武器種が決まりますが、そこに手に入れた柄やらなんやらをくっつけてステータスを変える&見た目を変えることができるわけです。銃なんかはストックやらグリップやらマズルなんかもごちゃごちゃいじれるので、部品さえあればお好みで銃を組み上げることができます。

 これもやはり防具と同じくパーツ自体にステ値がついているので、性能を求めると必ずしもいつも好きな見た目の武器を作って使っていられるわけではないですが、クラフト素材を消費することで一回作った武器をいつでもバラしてパーツのとっかえひっかえができるので使い込んで愛着が湧いてきます。もっとも、あっちを取り替えこっちを取り替えしているうちに元のパーツが残るか定かではないですが……。




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 ちなみに近接武器にはこんなグリップもあります。


cons

すべてナレーターが話す形式になっており、ずっと地の文が喋っている

 バイオミュータントの世界の住人達はそれぞれケモノの言葉を喋っており、有名どころで言うとモンハンやどうぶつの森のようにウニャウニャと独自言語で会話をします。これはいいところです……が、こうしてNPCがせっかく独自言語を喋っているのに、それに合わせてダイアログが出るのではなく全てナレーターが会話内容を「こういうふうに言っていたぞ」と伝書鳩みたいな伝聞で語るんですね。全てに「こう言っている」「ああ言っている」が挟まれる。これの困ったところとしてはナレーターがいちいち伝聞で喋るために無駄な文が生じてしまい、大したことのない話もひたすら長くなるところがしんどい。言ってしまえばテンポが悪いです。
 必ずしもナレーター役がいることは悪くなく、たとえばヴァニラウェアドラゴンズクラウンなんかはゲームブックを意識して作っているので伝聞形式の語りで話が進んでいっても面白いです。ただ、バイオミュータントでは何をするにしてもひたすら日本語で語りが入って鬱陶しくて仕方ないので自分はゲーム内で音声を英語に変えてしまいました。

 まあ、実はこのナレーションは主人公の持っている小さいバッタ型ナビマシンがケモノの言葉を翻訳して喋っている設定になっているため、いちおうストーリー上納得はできる設定があります。それがストーリー開始すぐ明かされるわけではないので個人的になんだかモヤモヤしましたが、僕はそのへんの説明がされるシーンからはその事自体は気にならなくなりました。
 なんか、せめてゲーム開始してすぐ「よう相棒!」とか挨拶と自己紹介してくれたらいいんですけど(っていうかナビマシンとかAIキャラってそういうのありますよね?)、なんやようわからんバッタくっつけとんなみたいな状態からノータッチで過去の回想に入るまで何も言われないので……。
 人によってはしんどい要素かもしれません。



ストーリーテリングが下手

 世界観の説明がすべてにおいて投げっぱなしでいきなり入ってつっかかる感じです。

 ゲームを起動してタイトル画面を見るだけで毎回長々と字幕を出してナレーター(つまりバッタ)が世界観設定を喋って説明します。勘弁してほしい。かろうじてパズルを解いたり資料を集めることで過去の設定などが明らかになっていきますが、急に見たことのないキャラがいかにも旧知の知り合いですみたいな感じでゴロゴロ出てきて唐突に回想に入ったりします。
 翻訳の質が直訳気味でよくないのもあるんですが、じゃあ原語ならどうなのかな?と英語のナレーションを聞いていても急に独自用語がドン!と出てきて雰囲気で察しろみたいなことを言ってるのがわかるのでもうこれはライターと演出の問題なんじゃないかなといったところです……。
 他ゲーのたとえを安易に持ち出すのもまずいとは思いますが、ファルシのルシがコクーンでパージと同じく「ちゃんと意味はあるんだけどノー解説でいきなりバーンと出すから用語やそのキャラを理解するのに時間がかかる」という問題がバイオミュータントでも頻発しており、よくわからん光と闇の妖精が唐突に出てきて小難しい言い回しでケンカした挙げ句にどつきあいコントやってんな……みたいなのを開幕から見せられるのでなんだかなとは思います。僕もものを書く人間の端くれである手前チクチク言うのは相手がかわいそうだと思うのですが……、はっきり言ってしまえば「書きたい!」が先行して前提の説明があまりに省かれまくってるため読み手が置いてきぼりをくらうというパターンです。


総評(あくまで序盤時点の)

 クラフト要素をはじめとしてゲームシステムの工夫が光るところもあり、決して悪いわけではないです。ミドルサイズのゲームとして考えるとするならむしろよくできているとさえ言っていいでしょう。あくまで僕もまだ序盤をやっているだけですから、遊びこむことで良さが出てくるのかもしれないとも思います。


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 Twitterでも話題になっていたクソダサワードアートもここまでくると逆に面白く、いいかもしれないとすら感じますね。


 ただストーリーテリングなど細かな作り込みが甘いためそこを重視して買うならば発売時点の今の価格はぶっちゃけた話あまりにも高いというのもまた事実です。いくら設定上の理由があったとしても地の文がGMのごとくでしゃばってくる鬱陶しさが否定できずそこは確実に減点要素になってしまいますし、そうである以上百点満点のゲームだとは言えないですね。

 苦言を呈するとすれば、バイオミュータントはそのような良さと悪さを併せ持ついわば佳作といった立ち位置であるのに関わらず、なぜこのAAAタイトル級の価格や広告戦略で発売したのかということです。これはゲームを作っているスタジオが悪いわけではなく、パブリッシャーであるTHQの販売戦略が甘く読み間違えているのが問題なのですが、そのへんの背後関係がわからないプレイヤーからしてみれば価格に対する不満感を持つのはごく当たり前のことです。
 たとえばといっちゃあアレですけど、僕が過去記事を書いたりもしたCP2077なんかは、要は最適化不足が問題なだけでコンテンツ量や戦闘システムは確かにそのお値段分充実していました。言うだけのモノは詰め込んであったと思います。
 そのあたりに多少瑕疵があるというか物足りないところがあるバイオミュータントを、いくら案件とはいえ「惜しいところもある」と触れないまま大型タイトルのように喧伝したファミ通とか電撃とかのプレスもちょっとどうかと思いますね。そういうことをすると最終的にプレイヤーの不興を買ってメーカーも信用を失って損をするわけですよ。いつまでもクロスレビューやってんじゃないんだから無理して箔つけなくてもいいんじゃないですか。もっとも、僕自身ゲームのニュース記事書いてる企業に対してそもそも強くあたるきらいがあるのでアレですが。


 総合して、好き嫌いで言えば僕は好きなゲームだと思いますし、決して駄作の誹りを受けるような悪い作品ではないですが、やや疑問符がつくところのあるゲームだとは思います。各ハードごとの違いがわかる実機映像を出したりしてたのはいいことなんですが、プレスリリース周りに関してはそんなにビッグタイトルみたいな宣伝はちょっとどうなのという部分もあります。
 いいゲームではあると思いますが、責任を持って他人にすすめるのは無理かなあといったところです。自分としてはアップデートでより良くなっていくのを待つか、セールを見合わせることをおすすめします。

<了>